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2011.02.10
A-0004. フーリエ変換による再構成 — TT
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ フーリエ変換による再構成 発行:エスオーエル株式会社 https://www.sol-j.co.jp/ 連載「X線CTで高精度寸法測定!?」 2011年2月10日号 VOL.004 平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。 X線CTスキャンによる精密測定やアプリケーション開発情報などをテーマに、 無料にてメールマガジンを配信いたしております。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 前回は、f(x,y) という形の物体があったとき、 各角度θでのX線の透過像が g(X,θ) と表せるという話をしました。 今回は、g(X,θ) が得られたときに、 フーリエ変換によって f(x,y) が再構成できる様子をみてみます。 まず、g(X,θ) をXについてフーリエ変換してみます。 G(ω,θ) = ∫g(X,θ) e^(-iωX) dX ただし、今回出てくる積分の範囲は全て、(-∞,∞) です。 ここで、前回のラドン変換を思い出してみると、 g(X,θ) = ∫f(X cosθ - Y sinθ, X sinθ + Y cosθ)dY でしたので、G(ω,θ) がもう少し計算できて、 G(ω,θ) = ∫∫f(X cosθ - Y sinθ, X sinθ + Y cosθ)dY e^(-iωX) dX となります。 今、XとYについての二重積分になりましたので、 変数変換してxとyの二重積分にします。 XとYは投影スクリーンの座標系で、xとyは測定される物体の座標系で、 x = X cosθ - Y sinθ, y = X sinθ + Y cosθ という関係がありました。 ∂(x,y)/∂(X,Y) をヤコビ行列とすると、dxdy = |∂(x,y)/∂(X,Y)| dXdY ですので、 4つの偏微分 ∂x/∂X, ∂x/∂Y, ∂y/∂X, ∂y/∂Y を計算して、 ヤコビアンを計算します。 |∂(x,y)/∂(X,Y)| = (∂x/∂X)(∂y/∂Y) - (∂x/∂Y)(∂y/∂X) = (cosθ)(cosθ) - (-sinθ)(sinθ) = 1 なので、dxdy = dXdY です。 従って、G(ω,θ) がさらに計算できて、 G(ω,θ) = ∫∫f(x,y) e^[-iω(x cosθ + y sinθ)] dxdy となります。 ここで、X = x cosθ + y sinθ を使いましたが、 上記 x=... の両辺にcosθを掛け、y=... の両辺にsinθを掛けて、 二つの式を足せば出てきます。 ここまで来ると、 u = ωcosθ, v = ωsinθ と置くことで、よく知られた変換式になります。G(ω,θ) は、 G(u,v) = ∫∫f(x,y) e^[-i(ux + vy)] dxdy と書き直せて、G(u,v) が f(x,y) の二次元フーリエ変換になっています。 つまり、G(u,v) を uとvについて二次元逆フーリエ変換することで、 f(x,y) が以下のように求まります。 f(x,y) = [1/(4π^2)] ∫∫G(u,v) e^[i(ux + vy)] dudv 少し長くなりましたが、要約するとこういうことです。 ・g(X,θ) から f(x,y) を再構成したい。 ・でも、直接的に逆ラドン変換をする方法はよく分からない。 ・そこでまず、g(X,θ) を一次元フーリエ変換して、G(ω,θ) を作る。 ・次に、G(u,v) を二次元逆フーリエ変換すると f(x,y) が再構成できた。 ここで注目すべきは、フーリエ変換のみで再構成ができたことです。 フーリエ変換は、FFT(高速フーリエ変換)などが存在し、コンピュータの得意技です。 そして、g(X,θ) から f(x,y) の再構成が解析的に厳密に解けることも分かりました。 実は、ここまで計算方法をご紹介しましたが、 TomoScopeが実際この計算をそのまま実行しているわけではありません。 TomoScopeの計算方法に到達するには、 このような基礎的事項をたくさん積み上げていく必要があります。 -- 高野智暢