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2012.12.10
A-0019. 基準スケールのたわみ — TT
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 基準スケールのたわみ 発行:エスオーエル株式会社 https://www.sol-j.co.jp/ 連載「X線CTで高精度寸法測定!?」 2012年12月10日号 VOL.019 平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。 X線CTスキャンによる精密測定やアプリケーション開発情報などをテーマに、 無料にてメールマガジンを配信いたしております。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 丁度2年前、メールマガジンで、 フックの法則から自重たわみ曲線の微分方程式まで、 5回にわたって「保持方法による変形」シリーズを書きました。 023. 保持方法による変形とフックの法則 025. 保持方法による変形と曲げ応力 027. 保持方法による変形とてこの原理 029. 保持方法による変形とたわみ曲線 031. 保持方法による変形と自重たわみの見積り もう2年も経ったのかと思うと、月日の経つのは早いなぁという驚きと、 これまでよく書き続けたなぁという感慨の念があります。 さて、Werth(ベアト)の測定機は、校正作業のときに、 基準スケール(ガラス製の棒にクロムでパターンが描いてある)を画像センサで 読み取って、トレーサビリティの取れた数値を座標系に付けていきます。 X線CT三次元測定機TomoScopeも、 本体の座標系(リニアスケール)は、この基準スケールによって校正されます。 では、基準スケールを置いた際に、自重でたわむ効果はどれ位影響があるのでしょうか。 校正作業の際に、もし上手く性能が出なかった場合、 温度や振動の影響を考えますが、基準スケールの置き方は疑った方がよいのでしょうか? その見当を付けるために、基準スケールの自重たわみ量を見積ってみます。 計算を全て載せると長くなってしまうので、 考え方は、以前のメルマガ「保持方法による変形」シリーズを見て頂くことにして、 要点だけ書きます。 考える状況は、はね出し単純梁の等分布荷重と呼ばれるものになります。 一本の棒を横たえて、点AとBで支えます。 基準スケールには、クロムで支える位置もマーキングしてありますので、 常にその位置で支えることとします。 棒の左端を点C、右端を点Dとします。 CA間の距離をa、AB間の距離をLとします。BD間の距離もaです。 a = 95mm、L = 240mm です。 ヤング率は、E = 0.7×10^4 kg/mm^2 を使います。 棒の断面は、一辺が b、もう一辺が h の長方形です。 b = 20mm、h = 10mm です。 従って、断面二次モーメントは、I = bh^3 / 12 = (10^4 / 6) mm^4 になります。 棒の重さ W = 0.22kg なので、等分布荷重 w は、 W = w×(L+2a) = 430w = 0.22 kg より、 w = (0.22 / 430) kg/mm です。 釣り合いの式を立てて、計算していくと、 点AとBでの反力 R は等しく、 R = ( w(a+L)^2 - wa^2 )/(2L) です。 また、断面にずれが生じないように抵抗する力として、せん断力 Q が働きますが、 点AとBで、それぞれ、 Q_a = R - wa , Q_b = wb - R となります。 点AとBの曲げモーメントも等しく、 M = -(wa^2)/2 です。 AB間で、点Aからxの位置の曲げモーメントは、 M_x = Rx - w(a+x)^2 /2 です。 点Aの回転角θを導入すると、 θ = wL(L^2 - 6a^2)/(24EI) として、 点Cのたわみ量 δ_C は、 δ_C = ( wa^4 /(8 EI) ) - θa , そして、AB間中央のたわみ量 δ_o は、 δ_o = ( 5wL^4 /(384 EI) ) - ( 2ML^2 /(16 EI) ) となります。数値を代入すると、 δ_C = 0.3 μm , δ_o = 3.3 μm と計算できました。 さて、中央点o (点Aから120mmの点) で 0.0033mm たわむとすると、 点Aから120mmを上から画像で読んだ際に、支えのない状態に比べて どれ位長さが変わって見えるかという量 Δ を見積ってみます。 点AとBを結ぶ直線 と 点Aと点oを結ぶ直線 の成す角をφとすると、 sinφ = 0.0033 / 120 より、φ = arcsin(0.0033 / 120)、 従って、 Δ = 120 - 120×cosφ ≒ 0.05 nm です。 TomoScope のリニアスケールの分解能が 0.1μm = 100nm なので、 Δ は取るに足らない量だと分かります。 Werthの三次元測定機の最上位機種 VideoCheck UA でも、 リニアスケールの分解能は 1nm なので、Δ は十分に小さいです。 点Cの位置のたわみ量も同様に、十分小さいことが確かめられます。 このような計算は、確かに面倒ですが、 問題があったときに、計算せずに実験だけで原因を切り分けようとすれば、 それ以上の手間と時間がかかることが容易に想像できます。 -- 高野智暢 ☆TomoScope専門サイトはこちら☆