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2015.02.11
A-0045. シンク関数とフーリエ変換 — TT
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ シンク関数とフーリエ変換 発行:エスオーエル株式会社 https://www.sol-j.co.jp/ 連載「X線CTで高精度寸法測定!?」 2015年2月11日号 VOL.045 平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。 X線CTスキャンによる精密測定やアプリケーション開発情報などをテーマに、 無料にてメールマガジンを配信いたしております。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 最近は、仕事で使う計算をする際に、 過去に自分の書いたメールマガジンをWebで検索して、参考にすることがあります。 元々、公式の丸暗記はしない(できない?)たちなので、 正確な式は、毎回導出するか、公式集を見ることになります。 急いでいるときは、インターネットで情報を得るのが便利ですが、 他人の計算結果を鵜呑みにはできません。 間違いも多いですし、前提条件や定義が違うことも多いです。 そもそも欲しい答えがないことも多々あります。 分厚い公式集や専門書を持ち歩くのも大変ですし、 過去に自分のやった計算ノートも全ては持ち歩けません。 紙の計算ノートは、必要なページを見つけるのも一苦労です。 今は、過去のメールマガジンをWebで公開したことで、 自分自身が検索して使いやすいというメリットを享受しています。 今回は、時々使うことのある「シンク関数」の計算を書いておきます。 (漢字変換したときに、辛苦関数となってしまいましたが、そんなに苦しくないはずです。) シンク関数を書こうと思った背景があります。 この仕事をしていると、フーリエ変換して考えることが非常に多いのです。 また、フーリエ変換に裏打ちされた原理や使い方を理解してもらったときにのみ、 装置を買ってもらえるといっても過言ではないのです。 しかも、「フーリエ変換」という言葉を使わずに伝える必要があります。 フーリエ変換に慣れ親しんでいる人は少数派ですし、 フーリエ変換を知っている人にすら、「フーリエ変換に無関係な測定機は存在しない」 という事実を理解してもらうのは、非常に困難だからです。 で、なぜシンク関数なのか、ですが、 データの単純平均を考える場面がありました。 単純平均 = レクトフィルタ = 矩形関数との畳み込み積分 なので、矩形関数をフーリエ変換して考えた方が見通しが良いのです。 なぜか?畳み込みは面倒ですが、フーリエ変換後は、単なる掛け算になるからです。 そして、ど忘れです。 矩形関数のフーリエ変換は?と聞かれたら、シンク関数とすぐに思い出せたかもしれません。 でも、実際に直面している問題に答えようとして考えていたのですが、 矩形関数のフーリエ変換になかなかたどり着けませんでした。 ど忘れというより、盲点。気が付くのに時間が掛かりました。 朝に考え始めて、モヤモヤしたまま午前中を過ごし、お昼ご飯中に「あ!」っとなりました。 フーリエ変換は公式を覚えておくと便利です。 正規分布は、フーリエ変換しても正規分布というのは、よく使う性質です。 あと、定数関数とディラックのδ関数がフーリエ変換で対になっている性質もよく使います。 でも公式を暗記するのは苦手です。 いや、フーリエ変換は公式を暗記しない方が良いと言いたいです。 そもそも、フーリエ変換と逆変換の定義に流儀がいくつもあり、 目的によって使いやすい定義が違います。 公式を丸暗記では、間違いの元です。 信頼できるのは、自分の計算ノートということになります。 ということで、便利なWeb検索が使えるように、下に計算を書いておきます。 矩形関数を x が -a/2 ~ a/2 の区間で、f(x) = 1/a となる関数 f としておきます。 それ以外の区間では、f(x) = 0 です。 積分区間を -∞ ~ ∞ とし、次のようにフーリエ変換します。 F(k) = ∫f(x) exp(-2πixk) dx 積分区間が -∞ ~ -a/2 のときと、a/2 ~ ∞ のときは、0 になるので、 積分区間を -a/2 ~ a/2 に取り直すことで、次のように書けます。 F(k) = ∫(1/a) exp(-2πixk) dx 比較的簡単な定積分になりましたので、計算を進めます。 ( [] という括弧の意味は定積分で使うあれなので、汲み取って下さい。) 右辺 = (1/a)( 1/(-2πik) ) [ exp(-2πixk) ] = ( 1/(-2aπik) ) × ( exp(-πiak) - exp(πiak) ) = ( 1/(-2aπik) ) × (-2i) sin(πak) = ( 1/(aπk) ) × sin(πak) 従って、 F(k) = (sin(πak)) / (πak) となりました。 これが「シンク関数」というものです。 光学では、スリットのフラウンフォーファー回折で出てきます。 数学では、三角関数の微分を勉強すると遭遇します。 -- 高野智暢 ☆TomoScope専門サイトはこちら☆