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2015.07.08
A-0051. 対称性と群と3次元回転 — TT
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 対称性と群と3次元回転 発行:エスオーエル株式会社 https://www.sol-j.co.jp/ 連載「X線CTで高精度寸法測定!?」 2015年7月8日号 VOL.051 平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。 X線CTスキャンによる精密測定やアプリケーション開発情報などをテーマに、 無料にてメールマガジンを配信いたしております。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 今回は、3次元回転を取り上げます。 日々、3D-CADや3次元の測定データをコンピュータ上で クルクル回転して扱っていますが、 その背景にある数学は、とても興味深いものです。 丁度、一週間程前にも、(コンピュータ上ではない)3次元回転に関して、 仕事上で触れる機会がありました。 三次元測定機で測定する物を保持する回転台の設計を 社内で口頭依頼したのですが、伝え方が不十分で、 思ったものと違う図面が出来上がってきたので、 訂正の依頼をしたということがありました。 XYZの直交座標系があり、角度0の初期状態で、 X軸に沿った回転A軸、Y軸に沿った回転B軸、Z軸に沿った回転C軸 を考えます。 (XYZ軸は固定で、A軸を回転するとB軸とC軸が振れる状況です。) 2つの回転台を組み合わせて、 B軸の回転台にC軸の回転台を乗せた機構を必要としていました。 しかし、設計者にそれを正確に伝えなかったために、最初の図面は、 C軸の回転台にB軸の回転台を乗せた機構になっていました。 何が問題か、少し説明してみます。 測定物として、ピラミッド(四角錐)を考えます。 正方形の底面があり、残りの面に [1], [2], [3], [4] と 番号が書いてあるとします。 底面を回転台の上に接するようにセットします。 B軸の回転台にC軸の回転台を乗せた機構であれば、 天井(Z軸方向)を向いていたピラミッドの頂点をB軸回転で少し横に倒し、 C軸回転で、[1]~[4] の面を順に天井を向くように送っていくことができます。 一方で、C軸の回転台にB軸の回転台を乗せた機構では、 ピラミッドの頂点は水平に向きを変えるだけで、 どのような回し方をしても [1]~[4] の面は天井を向くことはありません。 3次元の回転は、このように複雑になります。 回転を詳しく調べるには、まずある1点が回転によって、 どの位置に動くかを考えると明確になります。 2次元の回転は、前回少しお話しました。 2次元回転の場合は、角度αの回転後に角度βの回転をした状態と、 角度βの回転後に角度αの回転をした状態が一致します。 3次元回転の場合は、例えば、 X軸周りの角度αの回転後にY軸周りの角度βの回転をした状態と、 Y軸周りの角度βの回転後にX軸周りの角度αの回転をした状態は、 一般に一致しません。 2次元回転のように、操作の順序を入れ替えても状態が一致するものを 可換群(または、研究者の名前を冠して、アーベル群)と呼びます。 それに対して、3次元回転のように、 操作の順序を入れ替えると状態が一致しないものを 非可換群 と呼びます。 非可換群は、可換群に比べて圧倒的に扱いが困難になります。 今回も3次元回転を2次元回転でやったように、 極座標表示して、数式を書こうと思いましたが、 長くなったので(そして3次元の数式を書き始めるとさらに長くなりますので)、 次回以降にします。 -- 高野智暢 ☆TomoScope専門サイトはこちら☆