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2015.09.09
A-0054. 無限小回転から有限回転へ — TT
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 無限小回転から有限回転へ 発行:エスオーエル株式会社 https://www.sol-j.co.jp/ 連載「X線CTで高精度寸法測定!?」 2015年9月9日号 VOL.054 平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。 X線CTスキャンによる精密測定やアプリケーション開発情報などをテーマに、 無料にてメールマガジンを配信いたしております。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 回転という操作は、基本的で当たり前のようですが、 当たり前で片づけてしまうと、見えていないことがたくさんあるのです。 今回は、ここまで微分的な方向に考えてきたものを積分します。 回転前座標を (x0, y0, z0) として、 回転後に (x1, y1, z1) へ移るとします。 各軸周りの無限小回転を書き下してみます。 前々回(VOL.052)の式と前回(VOL.053)の話を合わせると計算できます。 3次元回転と極座標表示 3次元回転と無限小回転 X軸周りに無限小角度εの回転: x1 = x0 y1 = y0 - εz0 z1 = εy0 + z0 Y軸周りに無限小角度εの回転: x1 = x0 + εz0 y1 = y0 z1 = -εx0 + z0 Z軸周りに無限小角度εの回転: x1 = x0 - εy0 y1 = εx0 + y0 z1 = z0 これらの式をよく見てみると、規則性が見えてきます。 その規則性を分かり易く表すために、次のような操作 I と J を用意します。 I は、恒等変換と呼ばれ、 x1 = x0 y1 = y0 z1 = z0 のように、回転しない操作です。 J は、2つの座標値を入れ替える操作です。 x, y, z と3つの値があるので、入れ替えは3通りあります。 入れ替えない値を J の後ろにカッコ書きで記しておくことにします。 また、入れ替えた2つの値について、 x→y→z→x の方向を負、x←y←z←x の方向を正としておきます。つまり、 J(x) は、 y1 = -z0 z1 = y0 J(y) は、 x1 = z0 z1 = -x0 J(z) は、 x1 = -y0 y1 = x0 という操作を表すことにします。 これで、無限小回転の式の規則性を式で表す準備ができました。 先に、規則性を言葉で表してみると、 1) 回転軸の方向は、値をそのままにしておく。 2) 残りの方向は、「そのままの値」と 「互いを入れ替えた値に無限小を掛けたもの」との和、または差。 3) 和か差は、入れ替えの方向によって定める。 と言えます。 言葉だと分かりにくいです。 これを式で書くととてもシンプルで、 X軸周りに無限小角度εの回転: I + εJ(x) Y軸周りに無限小角度εの回転: I + εJ(y) Z軸周りに無限小角度εの回転: I + εJ(z) で表せます。 さて、今回やりたかったことは、 無限小を積み上げて有限回転を作るということです。 そのために、回転という操作の記号も用意しておきます。 Ux(θ) という記号で、X軸周りに角度θの回転操作を表すことにします。 すると、X軸周りで、有限の角度θの回転をした後に、 無限小の角度εの回転をしたときは、 Ux(θ) Ux(ε) と書けます。 これは、X軸周りで一度に θ+ε 回転した時と等しいので、 Ux(θ+ε) = Ux(θ) Ux(ε) という式が立ちます。 今、我々は無限小回転に限って、式を更に分解することができます。 それは上で導いたように、I と J を使って、 Ux(ε) = I + εJ(x) と分解できるということです。 これを使って、Ux(θ+ε) を計算していきます。すると、 Ux(θ+ε) = Ux(θ) Ux(ε) = Ux(θ) {I + εJ(x)} = Ux(θ)I + εUx(θ) J(x) = Ux(θ) + εUx(θ) J(x) となります。 I という操作は、丁度数字の 1 のように、 他の操作の前後にいくらやっても、その操作を変えることはありません。 では、右辺の Ux(θ) を左辺に移項してみます。 Ux(θ+ε) - Ux(θ) = εUx(θ) J(x) そして、両辺を ε で割ります。 無限小ですが、0ではないので割れます。 {Ux(θ+ε) - Ux(θ)} /ε = Ux(θ) J(x) なんと、左辺は微分の定義式です! なので、微分の式に書き直します。 dUx(θ)/dθ = Ux(θ) J(x) そしてこれは、1度微分すると J(x) が掛かって元に戻るという 一番簡単な微分方程式になっています。 微分方程式 dy/dx = ay の解は簡単で、y = exp(ax) です。 従って、Ux(θ) の微分方程式も同様に解けて、 Ux(θ) = exp( θJ(x) ) です。( 念のため、Ux(0) = I です。 ) Y軸とZ軸もX軸と同様に計算できて、 Uy(θ) = exp( θJ(y) ) Uz(θ) = exp( θJ(z) ) です。 さらに、一般的な有限回転 U(α,β,γ) の式も与えることができて、 U(α,β,γ) = exp(αJ(x) + βJ(y) + γJ(z)) になります。 -- 高野智暢 ☆TomoScope専門サイトはこちら☆