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2015.09.09

A-0054. 無限小回転から有限回転へ — TT

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無限小回転から有限回転へ

発行:エスオーエル株式会社
https://www.sol-j.co.jp/

連載「X線CTで高精度寸法測定!?」
2015年9月9日号 VOL.054

平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。
X線CTスキャンによる精密測定やアプリケーション開発情報などをテーマに、
無料にてメールマガジンを配信いたしております。

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回転という操作は、基本的で当たり前のようですが、
当たり前で片づけてしまうと、見えていないことがたくさんあるのです。

今回は、ここまで微分的な方向に考えてきたものを積分します。


回転前座標を (x0, y0, z0) として、
回転後に (x1, y1, z1) へ移るとします。

各軸周りの無限小回転を書き下してみます。
前々回(VOL.052)の式と前回(VOL.053)の話を合わせると計算できます。

3次元回転と極座標表示
3次元回転と無限小回転


X軸周りに無限小角度εの回転:
  x1 = x0
  y1 = y0 - εz0
  z1 = εy0 + z0

Y軸周りに無限小角度εの回転:
  x1 = x0 + εz0
  y1 = y0
  z1 = -εx0 + z0

Z軸周りに無限小角度εの回転:
  x1 = x0 - εy0
  y1 = εx0 + y0
  z1 = z0


これらの式をよく見てみると、規則性が見えてきます。
その規則性を分かり易く表すために、次のような操作 I と J を用意します。

I は、恒等変換と呼ばれ、

  x1 = x0
  y1 = y0
  z1 = z0

のように、回転しない操作です。


J は、2つの座標値を入れ替える操作です。
x, y, z と3つの値があるので、入れ替えは3通りあります。
入れ替えない値を J の後ろにカッコ書きで記しておくことにします。
また、入れ替えた2つの値について、
x→y→z→x の方向を負、x←y←z←x の方向を正としておきます。つまり、

J(x) は、
  y1 = -z0
  z1 = y0

J(y) は、
  x1 = z0
  z1 = -x0

J(z) は、
  x1 = -y0
  y1 = x0

という操作を表すことにします。

これで、無限小回転の式の規則性を式で表す準備ができました。
先に、規則性を言葉で表してみると、
  1) 回転軸の方向は、値をそのままにしておく。
  2) 残りの方向は、「そのままの値」と
    「互いを入れ替えた値に無限小を掛けたもの」との和、または差。
  3) 和か差は、入れ替えの方向によって定める。
と言えます。
言葉だと分かりにくいです。

これを式で書くととてもシンプルで、

  X軸周りに無限小角度εの回転: I + εJ(x)
  Y軸周りに無限小角度εの回転: I + εJ(y)
  Z軸周りに無限小角度εの回転: I + εJ(z)

で表せます。


さて、今回やりたかったことは、
無限小を積み上げて有限回転を作るということです。

そのために、回転という操作の記号も用意しておきます。

Ux(θ) という記号で、X軸周りに角度θの回転操作を表すことにします。

すると、X軸周りで、有限の角度θの回転をした後に、
無限小の角度εの回転をしたときは、

  Ux(θ) Ux(ε)

と書けます。
これは、X軸周りで一度に θ+ε 回転した時と等しいので、

  Ux(θ+ε) = Ux(θ) Ux(ε)

という式が立ちます。
今、我々は無限小回転に限って、式を更に分解することができます。
それは上で導いたように、I と J を使って、

  Ux(ε) = I + εJ(x)

と分解できるということです。
これを使って、Ux(θ+ε) を計算していきます。すると、

  Ux(θ+ε)
    = Ux(θ) Ux(ε)
    = Ux(θ) {I + εJ(x)}
    = Ux(θ)I + εUx(θ) J(x)
    = Ux(θ) + εUx(θ) J(x)

となります。
I という操作は、丁度数字の 1 のように、
他の操作の前後にいくらやっても、その操作を変えることはありません。

では、右辺の Ux(θ) を左辺に移項してみます。

  Ux(θ+ε) - Ux(θ) = εUx(θ) J(x)

そして、両辺を ε で割ります。
無限小ですが、0ではないので割れます。

  {Ux(θ+ε) - Ux(θ)} /ε = Ux(θ) J(x)

なんと、左辺は微分の定義式です!
なので、微分の式に書き直します。

  dUx(θ)/dθ = Ux(θ) J(x)

そしてこれは、1度微分すると J(x) が掛かって元に戻るという
一番簡単な微分方程式になっています。

微分方程式 dy/dx = ay の解は簡単で、y = exp(ax) です。

従って、Ux(θ) の微分方程式も同様に解けて、

  Ux(θ) = exp( θJ(x) )

です。( 念のため、Ux(0) = I です。 )

Y軸とZ軸もX軸と同様に計算できて、

  Uy(θ) = exp( θJ(y) )
  Uz(θ) = exp( θJ(z) )

です。

さらに、一般的な有限回転 U(α,β,γ) の式も与えることができて、

  U(α,β,γ) = exp(αJ(x) + βJ(y) + γJ(z))

になります。


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高野智暢


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