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2017.01.11
A-0066. 平均自由行程の式の導出 — TT
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 平均自由行程の式の導出 発行:エスオーエル株式会社 https://www.sol-j.co.jp/ 連載「X線CTで高精度寸法測定!?」 2017年1月11日号 VOL.066 平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。 X線CTスキャンによる精密測定やアプリケーション開発情報などをテーマに、 無料にてメールマガジンを配信いたしております。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 以前、X線管内の平均自由行程の計算をしました。 そのときに使った式は、公式として当てはめました。 (メルマガでは省きましたが、使う前に自分で式を導出していました。) 公式を天下り的に使うのは、あまり好きではない性分なので、 使う式は使う前に導出しておかないとスッキリしないのです。 今回は、平均自由行程λの式を導出してみます。 以前のメルマガで使った平均自由行程の式は、 λ = 1/{(√2) μσ } でした。 μは、数密度で 1m^3 に何個という量(単位は、[m^-3])、 σは、散乱の有効断面積 [m^2] です。 まず、散乱の有効断面積が σ = 4πr^2 と書けることを確認します。 分子を半径 r の球と仮定します。 2つの球が衝突することを考えるのですが、 一方の A が止まっていて、もう一方の B が速度 v で向かってくると考えます。 一方の球 A が衝突に関わる大きさを全て持っていて、 もう一方の球 B は点であると考えます。 すると、進行方向と平行で、球 A の中心を通る直線を軸とした 半径 2r の円筒内に、点 B が入っている場合に、 衝突が起こることが分かります。 言い回しが難しくなってしまいましたが、 要は、半径 r の2つの球が衝突するのは、 大きさを無視して最接近したときの 球の中心間距離が 2r 以下のときということです。 散乱の有効断面積σは、その半径 2r の円の面積を求めることなので、 σ = (2r)^2 ×π = 4πr^2 のように確かめることができました。 さて、衝突が起こってから次の衝突が起こるまでの平均自由時間τと 速度 v の掛け算が平均自由行程λです。 つまり、 λ = vτ です。 そして、半径 2r で、高さ vτ の円筒の中に、 衝突する点 B が 1 つ入っている状況を考えれば、 分子の衝突が起こるときの数密度μの式を書き下せます。 その円筒の体積は、σ×vτ ですから、 その体積の中に 1個 ということなので、 μ = 1/(σvτ) = 1/(σλ) です。 つまり、これを λ= の式に直すことで、 λ = 1/(μσ) となります。 でも、分母に (√2) が足りません。 これは、1つの分子が速度 v で走っているという仮定のためです。 そこで、全ての分子が速度 v で走っていると考え直します。 速度 v で走る2つの分子の方向が、角度θとなっているとします。 2つの分子の相対速度を w と置けば、 それらの成す三角形の余弦定理から、 w^2 = v^2 + v^2 - 2vv cosθ という式が得られます。 この両辺の平均値を取ります。 平均を取ったものは < > という括弧で括ることにします。 <w>^2 = <v>^2 + <v>^2 - 2<vv cosθ> そして、θはランダムなので、cosθの平均を取ると、 <cosθ> = 0 です。 従って、 <w>^2 = <v>^2 + <v>^2 = 2×<v>^2 より、 <w> = (√2)<v> = (√2)v になります。 全ての分子が速度 v という仮定より、<v> = v です。 1つの分子が速度 v で走っているときの式の v を <w> に置き換えると、 μ = 1/(σ<w>τ) = 1/{σ(√2)vτ } = 1/{σ(√2)λ } となるので、ようやく、 λ = 1/{(√2) μσ } を得ることができました。 でも、これで終わりではないのです。 分子の速度が全て v というのは、現実的ではありません。 しかし、速度の分布がマクスウェル分布だとしても、 同じ結果が得られるのです。 今回は一応、使った式の導出ができたので、ここまでにします。 -- 高野智暢 ☆TomoScope専門サイトはこちら☆