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2017.04.12
A-0069. スカラー場の微分はベクトル場 — TT
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ スカラー場の微分はベクトル場 発行:エスオーエル株式会社 https://www.sol-j.co.jp/ 連載「X線CTで高精度寸法測定!?」 2017年4月12日号 VOL.069 平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。 X線CTスキャンによる精密測定やアプリケーション開発情報などをテーマに、 無料にてメールマガジンを配信いたしております。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 前回のメルマガでは、 スカラー場とベクトル場のお話をしました。 今回は、スカラー場の微分を考えてみます。 まず、微分の考え方を思い出してみます。 1m×1m×1m の部屋が横一列に 1000個並んでいるとします。 1つの部屋には、 左と右に1つずつ隣の部屋が接しています。 各部屋には、温度計が1つずつ置いてあり、 部屋の温度が分かるようになっています。 例えば、100号室とその隣の101号室の温度が まったく同じ 23.5℃ だったとします。 このとき、微分値は 0 になります。 200号室と201号室の温度がそれそれ 23.2℃ と 23.3℃ だったとします。 このとき、微分値は 0.1 です。 単位を付けるならば、度/部屋 という感じになります。 この温度差は、1部屋で 0.1度 であり、 もしこの調子で10部屋行くと、1度 の温度差になる という意味です。 300号室と301号室の温度がそれぞれ 22.0℃ と 27.0℃ だったとします。 これは、200号室と201号室の温度差(0.1度) と比べると大きい差(5.0度)になっています。 300号室と301号室の微分値は 5.0度 ということです。 この調子で10部屋行くと、310号室は 50度高い 72℃ になってしまいます。 実際には微分値なので、「この調子で行けば」という条件は、 一般には成立しません。 もう少し正確にいうと、これは微分値ではなく、 差分です。 微分にするには、 部屋の幅を1mから無限に小さくして、 部屋の数を無限に増やす必要があります。 すると、無限に薄い部屋が無限個並んでいる状態になりますが、 左端の部屋から右端の部屋までの距離は、変わらず 1000m です。 部屋を指定するには、左端から何mの部屋という具合になります。 左端から 500m の部屋について、 隣接する部屋との温度差が その調子で 1m 行けば 0.1度 の温度差になるときに、 微分値が 0.1度/m ということになります。 スカラー場の微分を考えるには、 これを3次元にします。 ここまでで考えてきた横並びの部屋の場合も、 1次元のスカラー場に対応しますが、 ここからは、3次元のスカラー場を考えます。 まず、1000m×1000m×1000m の大きな部屋を 1m×1m×1m の小部屋に分割して、 各部屋に温度計を置きます。 このとき部屋の数は、1000×1000×1000個になりますが、 スカラー場にするために、無限に小さい部屋に分割していきます。 都合が良いことに、この無限分割は、 隣り合う部屋の温度差の差分を 微分にすることにもなります。 横並びの部屋(1次元)の分割と違うところは、 3次元の場合、接している部屋は、 前後と左右と上下の3方向があるということです。 そのため、微分値が3方向分出てきます。 例えば、 前から500m、左から500m、上から500m の部屋について、 前後方向の微分値が 0.2度/m、 左右方向の微分値が 0.3度/m、 上下方向の微分値が 0.4度/m、 という感じになります。 これを矢印(ベクトル)で表すことができます。 1つの部屋に対して、 前後と左右と上下の3つの矢印を置くことができて、 温度差が大きい方向ほど、長い矢印にします。 この3方向のベクトルを合成して、 1つのベクトルにすることができます。 直交する3方向の微分値が ベクトルの成分になっているのです。 つまり、スカラー場の微分がベクトル場になっていることが分かります。 せっかくなので、数式で書いてみます。 座標 (x,y,z) を決めると温度φが1つ決まる スカラー場を用意します。 そのとき、その微分を 「grad φ」 あるいは 「∇φ」 と書きます。 これは、座標 (x,y,z) を決めると温度勾配が決まる ベクトル場になっています。 まさに、スカラー場の微分のことを「勾配」と呼びます。 今度、機会があれば、 ベクトル場の微分もご紹介したいと思います。 ベクトル場の微分は、求める量によって、 スカラー場になるときと、ベクトル場になるときがあります。 -- 高野智暢