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2017.10.11
A-0075. 演算子(作用素)のはなし — TT
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 演算子(作用素)のはなし 発行:エスオーエル株式会社 https://www.sol-j.co.jp/ 連載「X線CTで高精度寸法測定!?」 2017年10月11日号 VOL.075 平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。 X線CTスキャンによる精密測定やアプリケーション開発情報などをテーマに、 無料にてメールマガジンを配信いたしております。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ メルマガ記事で微分を書くときに、 (d/dx)f(x) とか (∂/∂x)f(x,y) のように書くことが多いです。 それは、 df(x)/dx とか ∂f(x,y)/∂x と書いても良いのですが、f(x) を具体的に書いたときに、 (d/dx) を前に付けた方が見間違いが少ないだろうという意図があります。 メルマガ配信のSQLの関係で、微分によく使われる「’」の半角が使えない という事情もあります。 「’」の全角で良いではないかという話もありますが、 もはや単に好みの問題です。 さて、(d/dx) と書いたときには、 その後に続く f(x) などの関数に微分演算を作用させている という意味合いもあります。 このような (d/dx) を演算子と呼びます。 物理の人は、演算子と呼ぶことが多いですが、 数学の人は、作用素と呼ぶことが多いようです。 これまで書いたメルマガでは、演算子として意識することが 重要な意味を持つ場面はほとんどなかったと思いますが、 演算子として意識が必要な計算を求められる分野がいくつもあります。 その一つが、量子力学です。 普通の人は量子力学を意識することなく生活することができますが、 今の世の中は量子力学を応用した技術に囲まれています。 コンピュータやスマホに使われる半導体は、 量子論を基礎にして作られています。 弊社の扱う装置でも、 レーザーやX線の原理を理解するためには、量子論が必須です。 では、量子力学の最初の方に出てくる演算子の計算を見てみましょう。 x と (d/dx) を演算子とします。 そのときに、 x(d/dx) - (d/dx)x を計算する必要が出てきます。 この計算につまづくと、ほとんどの場合、 量子力学の本を読み進めることができなくなってしまいます。 間違いの例を出してみます。 x(d/dx) - (d/dx)x = x(d/dx) - 1 とすると間違いです。 x を x で微分すると 1 ではないか という考えですが、演算子の計算に慣れていないとこうなります。 では、どうやって計算するものなのでしょうか。 最初に、演算子を適当な f(x) に作用させます。 { x(d/dx) - (d/dx)x } f(x) = x { df(x)/dx } - (d/dx){ xf(x) } 次に、積の微分を適用すると、右辺は x { df(x)/dx } - (dx/dx) f(x) - x { df(x)/dx } になりますので、第一項と第三項が消えるのと、 (dx/dx) = 1 であることから、 { x(d/dx) - (d/dx)x } f(x) = -f(x) のように計算できます。 演算子としての見方に戻って、f(x) に作用させると、 -1 が掛かった f(x) になることが分かりますので、 x(d/dx) - (d/dx)x = -1 となります。 作用素の話を始めると、 それだけで何回分もメルマガ記事が書けてしまいます。 今回は、書こうと思った 1/4 の内容でこの長さになったので、 この辺で止めておきます。 機会があれば、続きとして、 「ナブラとラプラシアン」「双対空間」「リー環」 の話を書くかもしれません。 -- 高野智暢