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2017.11.08
A-0076. ナブラとラプラシアンのはなし — TT
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ ナブラとラプラシアンのはなし 発行:エスオーエル株式会社 https://www.sol-j.co.jp/ 連載「X線CTで高精度寸法測定!?」 2017年11月8日号 VOL.076 平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。 X線CTスキャンによる精密測定やアプリケーション開発情報などをテーマに、 無料にてメールマガジンを配信いたしております。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 予告通りに「ナブラとラプラシアン」について書きます。 まず、ナブラとは何かを思い出す必要があります。 以前に、スカラー場の微分はベクトル場になることを説明しました。 https://www.sol-j.co.jp/mailmag/a-0069.html スカラー場φ の微分は ∇φ と書きますが、 ここで出てくる「∇」という記号のことを「ナブラ」と呼びます。 スカラー場というのは、3つの数で表される座標ベクトル (x,y,z) を与えると、1つの数値 φ(x,y,z) が返ってくる関数のことです。 そのスカラー場の空間微分を式で書くと、 ∇φ = (∂φ/∂x, ∂φ/∂y, ∂φ/∂z) というベクトルになっているのです。 さて、前回の演算子(作用素)の話をスカラー場の空間微分に 当てはめてみると、スカラー場に作用する ∇ が、 ∇ = (∂/∂x, ∂/∂y, ∂/∂z) というベクトルで書けることになります。 すると、この記号がとても便利なことが分かります。 ベクトル場 E というものを考えてみます。 E はベクトルなので、太字で書くか、上に矢印を書きたいところですが、 このメルマガでは、そのように書けないので、ベクトルだと思って見て下さい。 ベクトル場というのは、3つの数で表される座標ベクトル (x,y,z) を与えると、1つのベクトル E = (U, V, W) が返ってくる関数のことです。 さて、ベクトル場の空間微分の一つに「発散」という量があります。 これは、各点におけるベクトル場の流入や流出を表します。 ベクトル場 E の発散を式で書くと、 ∇・E = ∂U/∂x + ∂V/∂y + ∂W/∂z になります。 この式を見ても、∇ がベクトルのように扱える作用素だと分かります。 ベクトル ∇ と ベクトル E の内積を取ったものと憶えておくことができます。 同様に、∇ と E の外積を考えることができて、 ∇×E = (∂W/∂y - ∂V/∂z, ∂U/∂z - ∂W/∂x, ∂V/∂x - ∂U/∂y) と書けます。 これは、ベクトル場 E の「回転」と呼ばれる量になります。 最後に、∇ と ∇ の内積を考えてみます。 これは、 ∇・∇ = (∂/∂x)(∂/∂x) + (∂/∂y)(∂/∂y) + (∂/∂z)(∂/∂z) になります。 これは、ラプラシアンと呼ばれる二階微分作用素になっています。 ラプラシアンは、△ という記号で表されるもので、 スカラー場 φ の勾配 ∇φ というベクトルの発散 ∇・∇φ = △φ という量になります。 ナブラやラプラシアンは、使いこなすのに時間がかかるかもしれませんが、 一度身に付いてしまうと、多くの現象を理解するのに役立ちます。 干渉計やX線CTでは、マクスウェル方程式が基礎にありますが、 マクスウェル方程式の計算では、 ナブラやラプラシアンをたくさん使うことになります。 -- 高野智暢