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2018.04.11
A-0079. 次元のお話 — TT
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 次元のお話 発行:エスオーエル株式会社 https://www.sol-j.co.jp/ 連載「X線CTで高精度寸法測定!?」 2018年4月11日号 VOL.079 平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。 X線CTスキャンによる精密測定やアプリケーション開発情報などをテーマに、 無料にてメールマガジンを配信いたしております。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 我々は、三次元測定機を扱う企業です。 装置のラインナップはほぼ全て三次元測定機です。 実際に、一般的に「三次元測定機」と呼ばれている装置を扱っています。 これは、装置が X,Y,Z の軸を持った測定機で、 「座標測定機」とも呼ばれます。 X線CT装置も扱っており、 これは内部観察もできますが、内部も含めた三次元測定機です。 平面度測定機は、二次元の測定機ではなく、 Z方向が超精密な三次元測定機です。 粗さ測定機も X,Y,Z の座標を取得する装置なので、三次元測定機です。 唯一、Z軸を持たない画像測定機のラインナップは、 三次元測定機とは言えませんが、 国内のユーザー様は、画像測定機でも X,Y,Z の座標軸を持った装置を 選択されていますので、実質これまで三次元測定機しか扱っていません。 ところで、我々の住んでいる世界は、空間的に 3次元です。 しかし、人間の目は 2次元の視覚情報しか受け取ることができません。 人間が 3次元を認識できると思っているのは、 脳がそのように情報をつなぎ合わせて処理しているからです。 4次元以上を認識できるかについては、いろいろな議論があります。 確かに、頭の中の 4次元以上を視覚的に相手に示すことは難しいです。 4次元を数学的に扱うのは、 次元の考え方と操作に慣れてしまえば、簡単です。 4次元のイメージを脳内に構成するのは、なかなか大変ですが、 できないことではありません。 3次元の断面は 2次元ですが、4次元は切り取ると 3次元の図形が出てきます。 世界は 3次元だし、仕事で扱う装置も三次元測定機だから、 3次元以上を考える必要はないと思われるかもしれません。 しかし、これまで書いたことのある仕事の技術見解書で、 4次元以上の考え方を使ったものはたくさんあります。 一番使うことが多いのは、無限次元空間の考え方です。 フーリエ級数、フーリエ変換、ルジャンドル多項式、ゼルニケ多項式 など、 基本的に無限次元空間を扱っているという認識が念頭にあります。 装置のカメラやディテクタは、 ピクセルの個数がそのまま次元の大きさになっている空間と 考えることができます。 つまり、次元という概念が身に付いているだけで、 かなり多くのことが理解できることになります。 まさに、次元の違う理解力が手に入ります。 「次元の違う理解力」というように、 日常会話で使う「次元」という言葉を知っているために、 「次元」の概念を理解しているような錯覚に陥ることが、 数学的な「次元」の概念を学ぶ上での障害になっているようにも感じます。 次元の概念を理解するには、 まずは、「線形独立」(あるいは「一次独立」)を理解する必要があります。 その前に「線形結合」(あるいは「一次結合」)を知っておく必要があります。 線形独立の定義を読めば分かりますが、 線形独立を知らない人が読んでも分からない文章になっています。 ベクトル v1, v2, ... , vn の線形結合 (a1)(v1)+(a2)(v2)+...+(an)(vn) が a1 = a2 = ... = an = 0 のときに限って、ゼロベクトルとなるとき、 v1, v2, ... , vn は線形独立であるという。 そして、考えている線形空間を生成するのに必要な線形独立なベクトルの数 のことを「次元」と呼んでいるのです。 知らないから定義を読んだのに、 知らないと定義が理解できないというのが数学です。 なぜそうなるかというと、 数学の定義を作る数学者は、頭の中に出来上がっている概念を 定義という形の文章にするからです。 その定義を使う人は、まずは定義を忠実に使ってみて、 頭の中に定義を作った人と同じ概念が出来上がると、 理解できるという仕組みになっているのです。 ですから、数学は本を読んだだけでは理解できないし、 身に付きません。 頭の中に概念を構築するやり方を身に付けることで、 定義が理解できるようになり、単なる記憶ではない何かが習得されます。 -- 高野智暢