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2018.05.09
A-0081. 実数と完備化について — TT
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 実数と完備化について 発行:エスオーエル株式会社 https://www.sol-j.co.jp/ 連載「X線CTで高精度寸法測定!?」 2018年5月9日号 VOL.081 平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。 X線CTスキャンによる精密測定やアプリケーション開発情報などをテーマに、 無料にてメールマガジンを配信いたしております。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 測定機を扱う場合には、 実数というものを知っている必要があります。 実数とはどういうものかを よくよく考えてみると、結構奥が深いものです。 実数を知るためには、 歴史からみても、普通の人が数を理解する方法からみても、 自然数を知っていた方が良いです。 1,2,3,4,... という数が自然数です。 自然数は、ものを数えたり、順番を付けたりするのに使います。 でも、お金を数えるときに自然数では不十分なことがあります。 お金がないときに 0円と表したり、 お金を借りたときに、-1000円と表したりするには、 自然数だけでなく、0や負の数を考える必要があります。 そこで、登場するのが整数です。 ...,-4,-3,-2,-1,0,1,2,3,4,... という数のことです。 整数は、自然数を含み、 足し算と引き算と掛け算が自由にできるようになります。 割り算も自由にできる数を考えるには、 整数では不十分で、有理数というものを考える必要があります。 有理数とは、2つの整数 a,b を a/b のように分数の形にした数です。 このとき、分母は 0 にならないようにします。 分母を 1 にすると、有理数が整数を含んでいることが分かります。 では、実数はというと、 有理数の次に出てくる数ですが、作り方は容易ではありません。 整数から有理数を作るには、分数(割り算)を考えればよかった のですが、有理数から実数を作るには完備化という操作が必要です。 完備化によって、スカスカな有理数を ビッチリ埋めることによって実数ができます。 有理数がどれ位スカスカかというと、 √2、つまり2回掛けて2になる数が有理数(分数で表せる数)に ならないことから想像できます。 物の寸法を測るとき、1辺が1mmの正方形があれば、 その対角線の長さは、√2 mm になります。 もし、実数が無ければ、正方形の対角線の長さも 測れないことになります。 連続的に変化する量(長さや重さや時間など、例はたくさんあります) を表すには、どうしても実数が必要になってきます。 有理数を完備化したときに穴埋めに使った数を 無理数と呼びます。 √2 の他に、円周率πなども無理数です。 そして、有理数がスカスカであるために、 圧倒的に無理数の方が多いことになります。 さて、さんざんスカスカだと言った有理数には、 稠密(ちゅうみつ)という性質があります。 稠密というのは、どんなに狭い幅の間にも必ずある というギッシリ詰まった状態ということです。 有理数は分数で書けるので、分母にとても大きな整数を持ってくれば、 非常に小さい数を作ることができます。 そして、どんなに狭い幅を作っても、それにたくさん詰め込めるだけの 数を用意することができるのです。 有理数は、ギッシリ詰まっている(稠密)のに、 穴だらけのスカスカなので、 大量の無理数でビッチリ穴埋め(完備化)して、 連続な実数を作るのです。 本当は、関数の連続という性質の話を本題にするつもりでしたが、 完備化の話で長くなってしまったので、 連続の話は次の機会にします。 -- 高野智暢