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2019.02.13

A-0091. 1/2 の階乗と思考の観察 — T.T

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1/2 の階乗と思考の観察

発行:エスオーエル株式会社
https://www.sol-j.co.jp/

連載「X線CTで高精度寸法測定!?」
2019年2月13日号 VOL.091

平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。
X線CTスキャンによる精密測定やアプリケーション開発情報などをテーマに、
無料にてメールマガジンを配信いたしております。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



最近、少し悔しい思いをしたので、そのことを書きます。

2ヶ月程前、たまたま目に留まった記事に、
「17世紀に 1/2 の階乗 を計算した人が居る」
というものがありました。

その一文を見た瞬間、「ガンマ関数の計算かぁ」と
思い付いてしまいましたが、

負けず嫌いの性格があるため、
17世紀の天才にどこまで追い付けるか、
挑戦してみたくなりました。

最初に結論を言ってしまうと、
2ヶ月間考え続けましたが、たまたま開いた数学の本に、
ガンマ関数の値が載っているのが目に入ってしまい、
自力で辿り着けず、悔しかったというお話です。


まず、問題の意味ですが、階乗 n! というのは、
1 から n までのすべての整数を掛け算した値のことです。

そして、(1/2)! を計算しなさいという問題です。


何かアイデアが思い付いて問題が解けたときは、
気分が良いものです。
その気分を味わうためと、負けず嫌いの性格のため、
解く価値のある問題をよく探しています。

解く価値があるかどうかは、価値観や好みの問題なので、
絶対的な基準はありません。
単なるパズル的な(と自分が感じる)問題には、
興味がそそられません。

解く価値があると感じた問題は、
頭の片隅に置いて、解けるのを待ちます。

だいたい解けるときは、机に向かって考えているときではなく、
寝て起きたときとか、お風呂に入っているときとかです。
机に向かって書くのは、解けたと思ったことを記録する作業です。

書いてみた結果、解けていないことに気付いて、
考え直すこともありますが、
興味がある問題を解いてくれるのは、
無意識の間にバックグラウンドで働いている脳のプロセスです。


今回の問題には、いつもと違う事情がありました。
「この問題は、ガンマ関数と関係している」という知識が
存在していたことです。

そのため、ノーヒントで解くことで、
17世紀の天才と自分を比較したいという欲求を満たしたいので、
ガンマ関数に関する知識(記憶)に脳がアクセスしないように、
監視することにしました。

小さい頃から、思考する自分を観察することが趣味で、
今も思考の観察を続けています。
そのため、脳が記憶にアクセスする過程を観察できるという
特技があります。


さて、しばらく経っても問題が解けません。

そこで、どこまで無意識プロセスが考えを進めたのかを
確認するために、考えを書き出してみました。

解く道筋がいくつも思い付いていましたが、
どれも失敗しています。

でも、解けた後にやりたいことが沢山出てきました。

まず、ガンマ関数についてですが、
自分でゼロから構成することができないということが分かりました。
(本に沿って学習している最中は、そのことに気付かないことが多いです。)

ガンマ関数の式が与えられて、様々な性質を計算で証明して、
その奥深さに感動するという経験は、かなり昔にしています。
しかし、なぜガンマ関数がその形なのか、自力で導く経験をまだしていません。

次に、微分作用素について、知りたいことが沢山出てきました。

(d^n/dx^n)(x^n) = n! ですから、
(1/2)階微分 と (1/2)! に関係がありそうです。

このように、階乗の性質を引き継ぎつつ、整数から
1/2 のような半整数や実数まで拡張するには、
多くの数学的な概念と関係が出てきます。

複素解析や解析接続とも関係があります。

勉強し直したいこと、新たに勉強したいことが増えて、
全ては (1/2)! を自力で計算した後のお楽しみ
ということで我慢しました。


結局、冒頭で述べたように、
多くの応用があるガンマ関数なので、
たまたま開いた本に値が載っていて、自力で解く前に
答えの値を見てしまいました。

一度見てしまうと、すぐには忘れることができません。
しかも、ここまで我慢して引っ張ってきたために、
脳の回路の結び付きは強烈で、
ただ漫然とお勉強して覚えた知識と違い、強く記憶に残ります。

答えを見たときに「あぁ、そうだった。」と思い出せるので、
こんな初歩的な数学も忘却するほど鈍っていたのかという驚きと、
ガンマ関数を思い付いたオイラーは天才だなぁと改めて感じるのと、
いろいろな感情が生じます。


だらだらと文章を書いてしまいましたが、
何を言いたかったかというと、感情と連動した情報は、
記憶に定着します。

悔しい、びっくり、感動など、心(と呼ばれる脳の作用)が働いたときに、
脳は記憶を保持しようとします。

そして、考えているつもりでも、普段の脳は大した思考はしていません。
同じことをグルグル考えているか、
記憶を思い出して何かを思い付いた気になっていることが多いものです。

単なる記憶の再生ではなく、
一見関係のない幾つかの記憶がつながって、別の意味を持った時の
「ひらめいた」という感覚は、また同じ感覚を味わいたくなる
気分の良いものです。

これが趣味でも仕事でも、何かアイデアを思い付きたいと思う原動力であり、
そのために、材料となる情報をインプットする学習をしたいと思うのです。

この文章を書いている人は、
毎日こんなことを考えながら生きている人です。


とうとう (1/2)! の答えを書かずに書き終えます。

機会があれば、そして、単なる情報の書き写しではなく、
自分の体験として伝えることのできる何かがあれば、
また (1/2)! を話題にしても良いかなと思います。


--
高野智暢

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