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2019.11.13
A-0100. n進法とp進数 — T.T
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ n進法とp進数 発行:エスオーエル株式会社 https://www.sol-j.co.jp/ 連載「X線CTで高精度寸法測定!?」 2019年11月13日号 VOL.100 平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。 X線CTスキャンによる精密測定やアプリケーション開発情報などをテーマに、 無料にてメールマガジンを配信いたしております。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 前回は、抽象的な距離の概念について、お話ししました。 さらに一年半前くらいに、実数と完備化について、お話ししました。 今回は、これらに関連して、 かねてから話題にしたかった p進数 に触れたいと思います。 まずは、p進数 ではなく、n進法のお話をします。 なぜ n進法 から始めたいかというと、名前が似ているからです。 混同して「n進法」を「n進数」と呼ぶこともしばしば見受けられます。 この用語を混同しているときは、たいてい「n進法」のことを言っています。 なぜなら、普段「p進数」を話題にする人はめったにいないからです。 似ているけど、違うものというのは、何かを学ぶときに良いです。 似ている漢字を憶えるときは、違いに注目するために、脳が活性化します。 一見学習効率を落とす混乱の元を逆手に取ると、記憶に残ります。 そして厄介なのは、p進数 と n進法 は別の概念ですが、 両者を学んでいくと、関連性のあるものだと気づくのです。 さて、n進法 は、「数」を数字という記号で書き表すときの記法です。 数字に慣れてしまうと、数と数字の区別が付かなくなってきますが、 元々は別物で、人間が「対応関係」を理解できるために成せる業です。 n進法の n には、数字を入れますが、 n種類の記号(数字)を使うという意味です。 10進法は、普段よく使うものです。 0, 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9 の 10種類の記号を使います。 2進法 や 16進法 は、コンピュータでよく使います。 例えば、次の黒丸の数を数えてみます。 ●●●●● 10進法では「5」です。 2進法では「101」です。 次に、p進数 を紹介します。 よく知っている数の体系は、 自然数 → 整数 → 有理数 → 実数 → 複素数 のように拡張されていきます。 特に、有理数から実数への拡張には、完備化という飛躍が必要です。 完備化には、距離という概念が必要です。 有理数を √2 のような無理数にどんどん「近づけていく」極限操作 によって、有理数の穴を埋めていき、実数 を得ることができます。 このときの距離というのがポイントです。 1/2, 1/4, 1/8, 1/16, ... は 0 に近づいていく というのは、普通の感覚です。 この距離感覚で完備化すると、実数が出来上がります。 では、2進数 の世界を見てみます。(2進法ではありません。) この世界では、 2, 4, 8, 16, ... , 2^n , ... が 0 に近づいていきます。 数が大きくなっていくのに 0 に近づくというのはおかしい と思うのが普通です。でも、そういう距離を考えるのです。 2進数 の距離感覚は、 2で割った余りが等しいもの同士が、等しくないものよりも近い という測り方なのです。 さらに、4 (=2^2) で割った余りが等しい方がもっと近く、 8 (=2^3) で割った余りが等しければ、なお近いという具合です。 一般に、p進数の距離感覚は、 p, p^2, p^3, p^4, p^5, ... が 0 に近づいていきます。 注目しているのは、割り算の余りが似ているかどうかです。 数のある種の性質を調べるのに便利な距離の測り方なのです。 このように、p という数字を決めて、 ちょっと変わった距離を使って完備化すると、p進数 が出来上がります。 ここからが面白いところなのですが、 p進数 という(n進法とは違う)変なものがありますよ という紹介が今回の限界です。 2進数の世界でも、足し算、引き算、掛け算、割り算ができて、 1 + 2 + 4 + 8 + 16 + ... = -1 になるよ。とか、 p が素数のときが特別だよ。とか、 実数を小数表記すると、 小数点より左側が有限桁で、右側が無限桁になることがあるけど、 p進数は逆で、小数表記すると、 小数点より右側が必ず有限桁で、左側が無限桁になるよ。とか、 実数の世界では難しい証明が、p進数の世界では証明が簡単になったよ。 とか、 実数とp進数のそれぞれの世界で、問題の解きやすさの得意不得意があって、 お互いの不得意をカバーし合うと、すごいことが起こるよ。とか、 n進法とp進数には実は関連性があって、 特にコンピュータで数を扱うときにいいことがあるよ。とか、 p進数をさらに拡張したものが、実数から作った複素数と同型(対応関係が付く) ということが分かって驚くけど、 具体的な対応関係が作れないような奇妙なことになっているよ。 とか、、、 深みにはまると、普通の世界には戻って来れなくなりそうですが、 気分転換とか、固定概念を壊して頭を柔らかくする訓練とか、 楽しみ方は人それぞれです。 -- 高野智暢