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2020.08.12
A-0111. ロルの定理を公理にしてデデキントの切断公理を証明する — T.T
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ ロルの定理を公理にしてデデキントの切断公理を証明する 発行:エスオーエル株式会社 https://www.sol-j.co.jp/ 連載「X線CTで高精度寸法測定!?」 2020年8月12日号 VOL.111 平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。 X線CTスキャンによる精密測定やアプリケーション開発情報などをテーマに、 無料にてメールマガジンを配信いたしております。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 以前のメルマガで ロルの定理は、公理とすることができ、そのときは証明しなくてもよい。 何でも自分で確認したい性格だが、寿命は有限なので、 ロルの定理を公理と置く論理展開までは、 (その事実さえ知っていれば)やってみようとは思わない。 と書きました。 でも、やはり性格上、我慢できなくなり、証明します。 さすがに、ノーヒントで自力で証明しようとまでは思わなかったので、 専門書を参考に、証明してみます。 証明することは、 ロルの定理(公理) ⇒ デデキントの切断公理(定理) です。 ロルの定理: 開区間(a,b)で微分可能、閉区間[a,b]で連続な関数 f(x) があって、 f(a) = f(b)を満たすときに、開区間(a,b)上のどこかの点 c で、 f’(c) = 0 となる。 まず、ロルの定理 ⇒ ラグランジュの平均値の定理 を証明しておきます。 そのために、 開区間(a,b)で微分可能、閉区間[a,b]で連続な関数 g(x) に対して、 関数 F(x) を F(x) = (b-a) g(x) - {g(b) - g(a)} x のように作っておきます。 この F(x) に a と b を代入すると、 F(a) = (b-a) g(a) - {g(b) - g(a)} a = bg(a) - ag(b) , F(b) = (b-a) g(b) - {g(b) - g(a)} b = bg(a) - ag(b) となり、F(a) = F(b) だと分かります。 すると、F(x)について、ロルの定理を使うことができて、 開区間(a,b)上のどこかの点 c で、F’(c) = 0 となります。 従って、 F’(c) = (b-a) g’(c) - {g(b) - g(a)} = 0 と計算できるので、b-a≠0 から、 g’(c) = {g(b) - g(a)} / (b-a) となる c が開区間(a,b)上にあることが分かりました。 (これが、ラグランジュの平均値の定理 です。) 次に、開区間(a,b)で微分可能、閉区間[a,b]で連続な関数 h(x) があって、 開区間(a,b)で常に h’(x) >0 とします。 ここで、a≦α<β≦b であるような α, β を任意に持ってくれば、 関数 h(x) は、開区間(α,β)で微分可能、閉区間[α,β]で連続なので、 ラグランジュの平均値の定理 が使えます。 つまり、 h’(c) = {h(β) - h(α)} / (β-α) となる c が開区間(α,β)上にあります。 さらに、仮定より、h’(c) >0 なので、 h(β) - h(α) = (β-α) h’(c) >0 が言えるため、 h(β) > h(α) であることが分かります。 ここまでで、 ロルの定理 ⇒ 特定の条件を満たす h(x) に対して、常に h(α) < h(β) であることが確実となりました。(ただし、a≦α<β≦b です。) それでは、ここから背理法を使って、 デデキントの切断公理(定理)を証明してみます。 実数を2つの組(下組 A と 上組 B)に分けたとき、 「A に最大元がなくて B に最小元がない」と仮定します。 a∈A, b∈B とすれば、切断の定義から a < b です。 ここで、閉区間[a,b]で定義された関数 G(x) として、 G(x) = { x-a (x∈A), x-b (x∈B) を考えます。 このとき、ξ∈開区間(a,b) ならば、G’(ξ) >0 を示すことができます。 そのために、case1 と case2 に場合分けします。 case1: ξ∈A (下組) ξは A の最大元ではないので、ξ<η かつ η∈A となる η が存在します。 従って、ξ∈開区間(a,η) かつ、 開区間(a,η)で G(x)= x-a です。 よって、x∈開区間(a,η) ならば、G’(x) =1 なので、 その間の ξ においても G’(ξ) =1 が言えて、G’(ξ) >0 です。 case2: ξ∈B (上組) ξは B の最小元ではないので、ζ<ξ かつ ζ∈B となる ζ が存在します。 従って、ξ∈開区間(ζ,b) かつ、 開区間(ζ,b)で G(x)= x-b です。 よって、x∈開区間(ζ,b) ならば、G’(x) =1 なので、 その間の ξ においても G’(ξ) =1 が言えて、G’(ξ) >0 です。 これで、ξ∈開区間(a,b) ならば、必ず G’(ξ) >0 を示すことができました。 ここで、関数 G(x) を上述の h(x) に照らし合わせることで、a<b によって、 G(a) < G(b) であることが言えます。 ところが、関数 G(x) の定義より、 G(a) = G(b) = 0 です。 よって、矛盾が生じました。 これは、「A に最大元がなくて B に最小元がない」と仮定したことが原因です。 この仮定以外は、ロルの定理を公理として、証明済みの事実を使いました。 従って、「A に最大元があるか B に最小元がある のいずれかである」こと が示されました。 これで、 ロルの定理(公理) ⇒ デデキントの切断公理(定理) が証明できました。 自分の心に、これで満足か? と問い掛けてみます... 感想は... 特にありません。 -- 高野智暢