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2020.09.23
A-0112. 論理式の練習 — T.T
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 論理式の練習 発行:エスオーエル株式会社 https://www.sol-j.co.jp/ 連載「X線CTで高精度寸法測定!?」 2020年9月23日号 VOL.112 平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。 X線CTスキャンによる精密測定やアプリケーション開発情報などをテーマに、 無料にてメールマガジンを配信いたしております。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 前々回(7月)の記事では、 関数の連続性を論理式で書いてみました。 そして、反復練習は退屈かもしれないけど、 反復練習で身に付けたスキルは役に立つし、 練習してできるようになることは楽しいですよ というような文章を書いた気がします。 でも、意味も分からず、反復練習だけで、 計算ができるようになっても、役に立たないことがあります というようなことも以前に書いた気がします。 論語を学ぶとき、 声に出して素読をし、意味も分からず丸暗記するのが 良いのか悪いのかという話もあります。 人間の頭は、意味も分からず丸暗記すると、 逆に意味を知りたくなり、自発的に学ぶという 性質があるようで、論語の素読は無意味ではないようです。 でも、計算の場合(例えば、微分の計算など)は、 意味も分からず、反復練習して、計算だけはできる状態になると、 ある種の達成感があるので、その意味を知りたいという 欲求が湧かない状況が生じるのかもしれません。 それではもったいないです。 さて今回は、論理式の変形の練習をしてみます。 6種類の論理記号: ¬(~でない) ∧(かつ) ∨(または) →(ならば) ∀(任意の~について) ∃(ある~について) に対して、 計算の基本法則があります。 (1) ¬¬φ ⇔ φ (2) ¬(φ∧ψ) ⇔ ¬φ∨¬ψ (3) ¬(φ∨ψ) ⇔ ¬φ∧¬ψ (4) ¬(φ→ψ) ⇔ φ∧¬ψ (5) ¬∀xφ ⇔ ∃x¬φ (6) ¬∃xφ ⇔ ∀x¬φ これらは、日本語に読み直してみると、 確かに成り立っていることが分かります。 では、これらの規則を使って、 「関数 f(x) がある点 x=a で連続ではない」ことを 論理式で書いてみます。 まず、「関数 f(x) がある点 x=a で連続である」は、 ∀ε>0 ∃δ>0 ∀x(|x-a|<δ → |f(x)-f(a)|<ε) ということでしたので、これを否定します。つまり、 ¬∀ε>0 ∃δ>0 ∀x(|x-a|<δ → |f(x)-f(a)|<ε) です。これを変形していきます。 まず、(5)を使って、 ∃ε>0 ¬∃δ>0 ∀x(|x-a|<δ → |f(x)-f(a)|<ε) 次に、(6)を使って、 ∃ε>0 ∀δ>0 ¬∀x(|x-a|<δ → |f(x)-f(a)|<ε) さらに、(5)を使って、 ∃ε>0 ∀δ>0 ∃x ¬(|x-a|<δ → |f(x)-f(a)|<ε) そして、(4)を使うと、 ∃ε>0 ∀δ>0 ∃x(|x-a|<δ ∧ ¬|f(x)-f(a)|<ε) 最後に、「x < y」の否定は、「x ≧ y」なので、 ∃ε>0 ∀δ>0 ∃x(|x-a|<δ ∧ |f(x)-f(a)|≧ε) となります。(先頭の否定を後ろに送っていく感じです。) これを日本語で読むと、 関数 f(x) がある点 x=a で連続ではないときは、 あるε>0 が存在して、どんなδ>0 に対しても、 |x-a|<δ かつ |f(x)-f(a)|≧ε となる x が存在する。 という文章になります。 関数の連続という概念を理解してから、計算や証明ができるようになるのか、 それとも、 概念の理解はさておき、定義と計算規則を使いこなせるまで練習して、 さて関数の連続という概念は何を意味しているのかと気になって自発的に考えるのか。 人間が何かを理解するという現象やその過程を理解するのは難しく、興味深いものです。 -- 高野智暢