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2021.01.13
A-0118. 球面SAGのテーラー展開 — T.T
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 球面SAGのテーラー展開 発行:エスオーエル株式会社 https://www.sol-j.co.jp/ 連載「X線CTで高精度寸法測定!?」 2021年1月13日号 VOL.118 平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。 X線CTスキャンによる精密測定やアプリケーション開発情報などをテーマに、 無料にてメールマガジンを配信いたしております。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 仕事上、球面SAGのテーラー展開を使って計算する場面に、 時々遭遇します。 毎日のように使っていれば、忘れることなく、定着するのでしょうが、 使う頻度はそんなに高くありません。 でも、忘れたころに(なぜか本当にまるで忘れたころを狙っているかのように) 球面形状や球面波に関する計算が必要になり、 その計算工程の早い段階で、球面SAGの計算をせざるを得なくなります。 ちょっと考えると、 半径 r の球面から、境界が半径 h の円となる領域を切り取った場合、 その領域は、高さ z のお椀型の形状となり、 z = r - √(r^2 - h^2) と書けることが分かります。 この z を球面SAGと呼んでいます。 さて、h に対して、r がとても大きい条件の下で、 具体的な計算をする必要のある状況に度々出会います。 そこで、x = h/r とおいて、 f(x) = √(1 - x^2) = (1 - x^2)^{1/2} という関数を考えることになります。 こうすることで、 z = r - r f(h/r) が計算できるようになります。 そして、この f(x) をテーラー展開します。 微分をオイラーの記法で D と表すことにします。。 ( D f が 1階微分、D^2 f が 2階微分 という具合に続きます。) すると、以下のように計算できます: f(0) = 1 D f(0) = (1/2)(-2x)(1 - x^2)^{-1/2} = -x(1 - x^2)^{-1/2} = 0 D^2 f(0) = -(1 - x^2)^{-1/2} - x(-1/2)(-2x)(1 - x^2)^{-3/2} = -1 D^3 f(0) = -(-1/2)(-2x)(1 - x^2)^{-3/2} - 2x(1 - x^2)^{-3/2} - x^2 (-3/2)(-2x)(1 - x^2)^{-5/2} = 0 D^4 f(0) = -3(1 - x^2)^{-3/2} - 3x(-3/2)(-2x)(1 - x^2)^{-5/2} - 9x^2 (1 - x^2)^{-5/2} - 3x^3 (-5/2)(-2x)(1 - x^2)^{-7/2} = -3 従って、 f(x) = f(0) + D f(0)x + (1/2!)D^2 f(0)x^2 + (1/3!)D^3 f(0)x^3 + (1/4!)D^4 f(0)x^4 + ... なので、 f(x) = 1 - (1/2)x^2 - (1/8)x^4 + Ο(x^6) となります。 これを z の式に戻すと、 z = r - r f(h/r) = -r { - (1/2)(h/r)^2 - (1/8)(h/r)^4 + Ο((h/r)^6) } = h^2 /(2r) + h^4 /(8r^3) + ... になります。 そして、ほとんどの場合、最初の項で十分なので、 z = h^2 /(2r) として計算を進めることになります。 この式は、たまにしか使わないと忘れてしまうので、 よく使っているときは、当たり前のように使っていて、 時間が経ってから自分の計算を見直すと、 あれ?これどうやって計算したのかな?計算間違えかな? と思ってしまうことがあります。 その度に、テーラー展開の計算をしたノートを探して 確認することになるので、いつものように、ネットにアップして、 Googleで自分の書いた記事が検索できるようになると便利になります。 ちなみに、さらに高次の項まで計算する場合は、 g(x) = (1 + x)^α をテーラー(マクローリン)展開しておいて、 x を -x^2 に置き換えて、α=(1/2) とするのが見通し良いです。 g(0) = 1 D g(0) = α D^2 g(0) = α(α-1) D^3 g(0) = α(α-1)(α-2) D^4 g(0) = α(α-1)(α-2)(α-3) なので、 (1 + x)^α = 1 + αx + (1/2!)α(α-1)x^2 + (1/3!)α(α-1)(α-2)x^3 + (1/4!)α(α-1)(α-2)(α-3)x^4 + ... と展開できて、x を -x^2 に置き換え、α=(1/2) とすると、 f(x) = √(1 - x^2) = 1 - (1/2)x^2 - (1/8)x^4 - (1/16)x^6 - (5/128)x^8 - ... となります。 -- 高野智暢