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2021.05.12
A-0122. ラグランジュ方程式の導出 –T.T
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ ラグランジュ方程式の導出 発行:エスオーエル株式会社 https://www.sol-j.co.jp/ 連載「X線CTで高精度寸法測定!?」 2021年5月12日号 VOL.122 平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。 X線CTスキャンによる精密測定やアプリケーション開発情報などをテーマに、 無料にてメールマガジンを配信いたしております。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 前回は、「ラグランジュの運動方程式」というタイトルだったのに、 その式すら書くことなく、 そのときに思い浮かんだことを書くだけで終わってしまいました。 今度こそ、方程式の導出を(細かい説明抜きに)計算してみます。 まず、ラグランジアン L を用意します。 L は、考えている物理的システムがどんな特徴を持っているかを 表すもの(関数)です。 L が具体的にどんな式かというのは、今は気にしません。 一般的に、L が与えられたときに、どんな方程式を満たすか という抽象的な議論をしようとしています。 L の入力は、関数 q(t) と その微分 dq/dt と 時間 t です。 それらを入力すると実数が出力されます。 この際、どんな実数が出力されるのかも考えません。 考えたいのは、L を 時刻 t1 ~ t2 まで積分した量: S = ∫L(q, (dq/dt), t) dt が最小になる条件は何かということです。 S は、作用と呼ばれるもので、これは q(t) の汎関数になっています。 ここでは、S[q] と書くことにします。 汎関数というのは、関数を入力すると、数値が出力されるものです。 数値を入力すると数値が出力されるものは関数と呼ばれますが、 入力が関数というものは、少し抽象度が高いかもしれません。 また「細かい説明抜きに」という前置きを無視しそうになっているので、 以下、S[q] の停留条件 δS[q] = 0 を計算していきます。 ここで、δS[q] というのは、q を少しだけずらした (q + δq) にした際、 S がどれ位変化するかということなので、 δS[q] = S[q + δq] - S[q] と書けます。 これを S の定義式に従って書き下すと、 δS[q] = ∫L(q+δq, (dq/dt)+δ(dq/dt), t) dt - ∫L(q, (dq/dt), t) dt です。 そして、L(q+δq, (dq/dt)+δ(dq/dt), t) をテーラー展開します。 L(q+δq, (dq/dt)+δ(dq/dt), t) = L(q, (dq/dt), t) + (∂L/∂q)δq + (∂L/∂(dq/dt))δ(dq/dt) + ... この展開式を δS[q] の計算式に代入すると、 δS[q] = ∫(∂L/∂q)δq dt + ∫(∂L/∂(dq/dt))δ(dq/dt) dt になります。 この次は、積分計算を進めるために、部分積分をするのですが、 どこをどうするのかは、答えをすぐに見たい気持ちを抑えて、 今何がしたかったのかを思い起こしながら、式を眺めます。 勉強したばかりだと、答えを覚えているので、スッと計算できます。 でも、やり方を忘れてからが勝負です。 忘れた後に残っている何かが、学習の成果です。 やり方を忘れていても、残っている何かがあれば、 第二項を部分積分したくなります。 境界条件を使いたいのと、第一項の δq で括りたいと思ってしまうのです。 第二項の部分積分は、 ∫(∂L/∂(dq/dt))δ(dq/dt) dt = [ (∂L/∂(dq/dt)) δq ] - ∫d(∂L/∂(dq/dt))/dt δq dt と計算できます。 このときの [(∂L/∂(dq/dt)) δq] は、境界条件として、 t1 と t2 では δq = 0 なので、0 となります。 従って、 δS[q] = ∫(∂L/∂q)δq dt - ∫d(∂L/∂(dq/dt))/dt δq dt になり、δq で括って、 δS[q] = ∫{ (∂L/∂q) - d(∂L/∂(dq/dt))/dt } δq dt となります。 最後は、変分法の基本補題として証明すべきことなのですが、 δq が常に 0 でなければ、δS[q] = 0 とするには、 括弧 {...} の中身が 0 でなくてはならないのは、想像できると思います。 これにより、 (∂L/∂q) - d(∂L/∂(dq/dt))/dt = 0 が導出できました。 -- 高野智暢