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2021.08.11
A-0125. rot rot の計算 –T.T
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ rot rot の計算 発行:エスオーエル株式会社 https://www.sol-j.co.jp/ 連載「X線CTで高精度寸法測定!?」 2021年8月11日号 VOL.125 平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。 X線CTスキャンによる精密測定やアプリケーション開発情報などをテーマに、 無料にてメールマガジンを配信いたしております。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 光やX線を含む、電磁波について、 その性質をよく知ろうと思えば、 マクスウェル方程式は避けて通れません。 電磁波という名前からも分かるように、 電気や磁気の波の性質は、統一的に扱うことができます。 それは、基礎方程式であるマクスウェル方程式が あるからです。 マクスウェル方程式は、ベクトル場に関する 連立偏微分方程式であり、 div E = 4πρ div H = 0 rot E = -(1/c) ∂H/∂t rot H = (1/c) ∂E/∂t + (4π/c)j という形をしています。 書き方も、この一通りではなく、意図によって、 いろいろな表現方法があります。 そして、慣れないと、 扱うのはハードルが高いものかと思います。 何に慣れる必要があるかというと、 電磁場の性質を知りたいのであれば、 式の扱いを数学的に慣れるのではなく、 数学に惑わされずに、物理的な本質の表現であること を忘れないことに慣れる必要があります。 結局、そのためには、数学に慣れる必要があります。 英語で物語を読む状況に似ています。 英文法に慣れることを、数学に慣れることに対応させると、 物語を楽しむことは、物理的な本質を見ることに 対応するでしょうか。 英文法を知らなければ、物語を読むことはできません。 でも、英文法を知っているだけでも、物語は読めません。 英文法を気にしなくてもよい位に基礎が身に付いていると、 物語が自然に入ってきます。 さて、マクスウェル方程式のままでは、 波という性質が隠れて見えません。 波の性質を見るには、波動方程式を導出する必要があります。 導出は、次回以降に残しておくことにして、 今回は、そのときに必要となる公式を求めておきます。 ベクトル場 E = (a, b, c) に対して、 rot rot E を計算します。 ベクトル場というのは、空間の (x, y, z) を指定すると、 ベクトル (a, b, c) が返ってくるベクトル値関数のことです。 ベクトル場を理解するためには、ベクトルをよく知っている 必要があり、関数の考え方も身に付いている必要があります。 ここで、rot というのは、ベクトル解析で使う「回転」と呼ばれる 演算子です。 rot E = (∂c/∂y - ∂b/∂z, ∂a/∂z - ∂c/∂x, ∂b/∂x - ∂a/∂y) rot は、ベクトルをベクトルに対応させる演算子なので、 2回適用しても、やはりベクトルになります。 そこで、2回適用した rot rot E の x 成分だけを計算してみると、 (∂/∂y)(∂b/∂x - ∂a/∂y) - (∂/∂z)(∂a/∂z - ∂c/∂x) = (∂^2b/∂x∂y + ∂^2c/∂x∂z) - (∂^2a/∂y^2 + ∂^2a/∂z^2) = (∂/∂x)(∂a/∂x + ∂b/∂y + ∂c/∂z) - (∂^2a/∂x^2 + ∂^2a/∂y^2 + ∂^2a/∂z^2) となります。 ここで、ベクトル解析で使う「発散」と呼ばれる演算子 div は、 div E = ∂a/∂x + ∂b/∂y + ∂c/∂z であり、「ラプラシアン」と呼ばれる演算子 Δ は、 Δa = ∂^2a/∂x^2 + ∂^2a/∂y^2 + ∂^2a/∂z^2 なので、rot rot E の x 成分は、 (∂/∂x) div E - Δa となります。 同様に計算すると y 成分は、 (∂/∂y) div E - Δb となり、z 成分は、 (∂/∂z) div E - Δc となります。 これらをまとめると、 rot rot E = ((∂/∂x) div E - Δa, (∂/∂y) div E - Δb, (∂/∂z) div E - Δc) と書けます。 さて、ベクトル解析で使う「勾配」と呼ばれる演算子 grad は、 grad = (∂/∂x, ∂/∂y, ∂/∂z) のような形をしているので、 rot rot E = grad div E - ΔE という公式が得られました。 今後は、この公式が活躍します。 -- 高野智暢