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2021.09.08
A-0126. 波動方程式の導出 –T.T
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 波動方程式の導出 発行:エスオーエル株式会社 https://www.sol-j.co.jp/ 連載「X線CTで高精度寸法測定!?」 2021年9月8号 VOL.126 平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。 X線CTスキャンによる精密測定やアプリケーション開発情報などをテーマに、 無料にてメールマガジンを配信いたしております。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 今回は、一度はやっておいた方がよい(と思う) 波動方程式の導出を紹介します。 波動方程式は、いろいろな場面で登場します。 マクスウェル方程式から、電場や磁場は波動方程式を満たし、 電磁波として波の性質を持つことが分かります。 重力も重力波として、波の性質を持ちます。 量子力学で現れるシュレーディンガー方程式も 波動方程式と呼ばれています。 シュレーディンガー方程式は、係数に虚数が入っていて、 波動方程式の性質だけでなく、熱の拡散方程式の性質も持ちます。 他にも、何かを振動させたときには波が生じます。 このように、波の性質が現れるたびに、 波動方程式が背後に潜んでいます。 波動方程式は、波という現象を抽象的に捉えて、 その一般的な性質を理解するのに役立ちます。 それでは、両端を固定した弦の運動を考えることで、 波動方程式を導出してみます。 まず、独立変数として、時間 t と 1次元位置座標 x を取ります。 そして、従属変数として、u(t,x) を取ります。 u(t,x) は、時刻 t における、位置 x における弦の垂直方向変位です。 次に、弦の微小部分 [x, x+Δx] を考えます。 弦が一様な線密度 ρ を持つとき、微小部分の質量は、ρΔx です。 そして、加速度 a は、変位の時間についての 2階微分になるので、 (∂^2 /∂t^2) u(t,x) です。 ここで、微小部分に働く外力を F として、 ニュートンの運動方程式 ma = F に当てはめると、 ρΔx (∂^2 /∂t^2) u(t,x) = F になります。 続いて、微小部分に働く外力 F を求めます。 張力 T は、どこでも一定で、弦の接線方向に掛かるとします。 すると、弦の接線が x軸となす角度を θ としたときに、 張力の垂直成分は、T×sinθ となります。 これが微小部分の両端に、反対方向に掛かるので、 右端: T sinθ(t,x+Δx) 左端: -T sinθ(t,x) となります。 従って、微小部分に働く外力 F は、 F = T sinθ(t,x+Δx) - T sinθ(t,x) です。 ここで、角度θが常に微小に保たれている運動を考えます。 すると、 sinθ ≒ θ ≒ tanθ ≒ ∂u/∂x としても問題ありません。 これにより、 F = T(∂/∂x) u(t,x+Δx) - T(∂/∂x) u(t,x) とできます。 つまり、ニュートンの運動方程式は、 ρΔx (∂^2 /∂t^2) u(t,x) = T(∂/∂x) u(t,x+Δx) - T(∂/∂x) u(t,x) と書けることになります。 そして、両辺を Δx で割って、Δx → 0 の極限を取ることで、 ρ(∂^2 /∂t^2) u(t,x) = T(∂^2 /∂x^2) u(t,x) という、時間と空間について 2階の偏微分方程式が得られます。 ここで、 c = √(T/ρ) という、位相速度に対応する定数を置くと、 (1/c^2)(∂^2 /∂t^2) u(t,x) = (∂^2 /∂x^2) u(t,x) となり、波動方程式を導くことができました。 ここまで計算することで、波動方程式が求まったので、 これが数学を使って計算された真理だと思ってしまうのは、 早とちりです。 本当は、ここからが本番です。 どんな仮定を置いて、どんなモデル化をしたのかを考察する必要があります。 また、モデルの妥当性を検証し、適用範囲についても考える必要があります。 そもそも今回は、方程式を導いただけで、解いてもいません。 ここから先、とても楽しい世界が広がっています。 今回は、その世界への第一歩というところです。 -- 高野智暢