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2022.01.12
A-0131. ヘリウム原子について学ぶことは楽しい — T.T
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ ヘリウム原子について学ぶことは楽しい 発行:エスオーエル株式会社 https://www.sol-j.co.jp/ 連載「X線CTで高精度寸法測定!?」 2022年1月12日号 VOL.131 平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。 X線CTスキャンによる精密測定やアプリケーション開発情報などをテーマに、 無料にてメールマガジンを配信いたしております。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 年末年始は、ヘリウム原子の構造が気になって、 時間もあったので、学び直しました。 こんなに楽しいものだったのか!と思いましたが、 感じた楽しさを伝えられるだけの表現力がないので、 魅力をムリに伝えようとするのは諦めます。 ヘリウム原子に辿り着いたのは、 SiC(炭化ケイ素)の結晶構造がキッカケです。 そこから、共有結合を再学習し、 化学結合論の楽しさに目覚めつつあった師走、 結局、より基本的な原理の方向に興味が向く性格のため、 水素原子まで戻ることになりました。 水素原子については、過去に何度も学習しましたが、 水素原子の専門家というわけでもないので、 いつもだいたい忘れています。 でも、全体のストーリーとポイントは覚えているので、 学び直すと、あぁそうだったそうだった という感触があります。 原子の構造を学ぶと、量子力学の世界に入っていきますが、 そこで頻繁に遭遇するのが、特殊関数と呼ばれるもの達です。 距離に比例する引力を受ける場合、調和振動子と呼ばれますが、 これを解くと、エルミート(Hermite)多項式になります。 球に閉じ込められた自由粒子として、 3次元井戸型ポテンシャルと呼ばれる領域に トラップされた粒子について解くと、 内側では、球ベッセル(Spherical Bessel)関数と 球ノイマン(Spherical Neumann)関数が、 外側では、球ハンケル(Spherical Hankel)関数 といった特殊関数が出てきます。 円柱に閉じ込められた自由粒子の場合は、 ベッセル(Bessel)関数が出てきます。 そして、水素原子の動径方向について解くと、 ラゲール(Laguerre)陪多項式になります。 さらに、水素原子の動径方向以外は、 球面調和関数(spherical harmonics)になります。 ちなみに、球面調和関数は、 ルジャンドル(Legendre)陪多項式を使って書くことができます。 ここまで来ると、化学の周期律表の謎を理解するベースが出来上がります。 化学結合だって、この原理の延長にあるはずです。 量子力学バンザーイ、シュレディンガー方程式サイコー! となるわけですが、 なんと、水素原子の次のヘリウム原子ですら、 人類は厳密に解くことができません。 あんなに水素原子に対して強力だった武器が、 ヘリウム原子に対してすら非力とは。。 ここから先は、ハートリー・フォック近似から始まって、 先が長いです。とても長いです。 さて、ヘリウム原子についてのお話はこの辺にしておいて、 何度かお伝えしているように、特殊関数と呼ばれるもの達は、 量子力学でも電磁気学でも光学でも頻繁に出てくる、 役に立つ道具です。芸術品です。 映画を楽しむように、小説を楽しむように、 音楽を楽しむように、絵画を楽しむように、 特殊関数を楽しむことができます。 -- 高野智暢