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2022.04.13
A-0134. 平行六面体の対角線の長さ — T.T
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 平行六面体の対角線の長さ 発行:エスオーエル株式会社 https://www.sol-j.co.jp/ 連載「X線CTで高精度寸法測定!?」 2022年4月13日号 VOL.134 平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。 X線CTスキャンによる精密測定やアプリケーション開発情報などをテーマに、 無料にてメールマガジンを配信いたしております。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 6枚の正方形で立体を作ると、立方体ができます。 同じように、6枚の平行四辺形で立体を作ると、 平行六面体ができます。 三次元(座標)測定機を調整していると、 平行六面体の計算をその場でやる必要に迫られることがあります。 今回は具体例で、平行六面体の対角線の長さの計算をしてみます。 考える状況は、X,Y,Z の直交軸を持った測定機で、 立方体を測定します。 測定機の可動範囲は、どの軸も 400mm とします。 測定機の座標軸は、一辺 400mm の立方体に沿っている状態が 理想ですが、直角が出ていないと、平行六面体に沿う形になります。 平行六面体の頂点に名前を付けておきます。 X軸を OA、Y軸を OB、Z軸を OC とします。 XY平面内の平行四辺形を OADB とし、 それを OC の方向に平行移動したものを CEGF とします。 これで、平行六面体 OADB-CEGF になります。 点 O から一番遠い点は、点 G です。 このような空間図形を考えるとき、ベクトルを使うと便利です。 ベクトル a, b, c をそれぞれ a = OA = (400, 0, 0) b = OB = (400 cosα, 400 sinα, 0) c = OC = (δ1, δ2, ξ) とします。 ここまでセットアップすれば、必要な数値を計算することができます。 まずは、X軸とY軸を直角にしたいので、αを測定したいです。 OD 方向に 400mm の棒を置いて測定すると、 α < 90°であれば、棒は 400mm よりも短く測定されてしまいます。 OADB が正方形であれば、|OD| = |AB| ですが、 α < 90°ならば、|OD| > |AB| になります。 ここで、混乱しやすいポイントがあります。 測定機の OD が 長くなった分、400mm の棒は短く測定されます。 OD の長さは、 |OD| = |a+b| = 400 √{ (1+cosα)^2 + (sinα)^2 } = 400 √{ 2 + 2cosα } です。 同様に、AB の長さは、 |AB| = |a-b| = 400 √{ 2 - 2cosα } です。 α = 90°のとき、|OD| = |AB| = 400 √2 なので、 短く測定されるときの倍率は、1/√(1+cosα) 、 長く測定されるときの倍率は、1/√(1-cosα) です。 実際に 400mm の棒を測定した結果が、 OD 方向で、399.99mm (0.01mm 短い)となった場合、 α = 89.997°です。 このとき、AB 方向で測定すると、 400.01mm (0.01mm 長い)となるはずです。 (ならなかった場合は、別の調整が必要です。) このように Y軸が本来の方向に対して、0.003°傾いている ということが分かれば、これを調整します。 一辺 400mm の正方形にするには、 平行にずれたオフセット分(δ0)を戻してあげればよいので、 δ0 = 400 cosα = 0.02mm の調整となることが分かります。 X軸とY軸の直角が調整できたら、次は Z軸の倒れを調整します。 Z軸の倒れは、X軸方向(δ1)と Y軸方向(δ2)があります。 その計算準備として、ベクトル c の Z成分 ξ を計算しておきます。 |c|= 400 なので、 ξ = √{ 400^2 -(δ1)^2 -(δ2)^2 } です。 次に、平行六面体の対角線 OG, AF, DC, BE の長さを求めます。 |OG| = |a+b+c| = √{ 3*400^2 + 800*(δ1 + δ2) } |AF| = |a-b-c| = √{ 3*400^2 + 800*(-δ1 + δ2) } |DC| = |a+b-c| = √{ 3*400^2 + 800*(-δ1 - δ2) } |BE| = |a-b+c| = √{ 3*400^2 + 800*(δ1 - δ2) } もし、δ1 = δ2 = 0 の立方体になっていた場合は、 |OG| = |AF| = |DC| = |BE| = 400 √3 となるはずです。 従って、400 √3 に対して、上記の式との比を取ることで、 各方向の伸縮倍率を計算することができます。 例えば、OG, AF, DC, BE の方向でそれぞれ、 L1 = 399.9933 L2 = 400.0033 L3 = 400.0067 L4 = 399.9967 という測定結果が得られたとします。 (同様に、400 に対して比を取ることで、倍率が出ます。) 求めたい δ1, δ2 に対して、独立な方程式の数は足りていますので、 解くことができます。 今の場合、 δ1 = 0.015 mm δ2 = 0.005 mm となります。 もし、このような調整を理屈も分からずに、 行き当たりばったりの手探りでやっていると、 いつまでたっても終わりません。 ベクトルの計算ができると、測定結果を見て、何が起こっているのか 知ることができるので、調整を円滑に実施できます。 -- 高野智暢