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2022.06.08
A-0136. 平行六面体の体積と外積 — T.T
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 平行六面体の体積と外積 発行:エスオーエル株式会社 https://www.sol-j.co.jp/ 連載「X線CTで高精度寸法測定!?」 2022年6月8日号 VOL.136 平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。 X線CTによる精密測定やアプリケーション開発情報などをテーマに、 無料にてメールマガジンを配信いたしております。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ それでは予告通り、 平行六面体の体積と外積について書きます。 ベクトルの内積は、2つのベクトルを与えると、 スカラー(実数 とか)を返す演算でした。 ベクトルの外積は、2つのベクトルを与えると、 ベクトル(方向と大きさを持つもの)を返す演算です。 ベクトル a と b の外積 a×b は、 方向が a とも b とも垂直(a, b, a×b が右手系)で、 大きさが a と b が作る平行四辺形の面積です。 従って、ベクトル a と b のなす角度を θ とすると、 |a×b| = |a||b|sinθ です。(0≦θ≦π) 次に、3つのベクトル a, b, c を持ってきて、 平行六面体を作ります。 その平行六面体の体積 V(a,b,c) は、 底面積 |a×b| で、高さが |c|cosφ なので、 V(a,b,c) = |a×b||c|cosφ となります。 ただし、角度φは、a×b と c のなす角度です。 ここで、ベクトルの内積の式を思い出すと、 V(a,b,c) = c・(a×b) と書けることが分かります。 それでは、V(a,b,c) を成分表示してみます。 ベクトル a, b, c は、 実数 a1, a2, a3, b1, b2, b3, c1, c2, c3 を使って、 a = (a1, a2, a3) b = (b1, b2, b3) c = (c1, c2, c3) と書けます。 ここで、x軸, y軸, z軸の単位ベクトルをそれぞれ E1, E2, E3 と書くことにします。つまり、 E1 = (1, 0, 0) E2 = (0, 1, 0) E3 = (0, 0, 1) ということです。 (ベクトルとスカラーの表記が分かりにくくてスミマセン。) すると、例えば、ベクトル a は、 a = (a1)E1 + (a2)E2 + (a3)E3 のように書けるようになります。 V(a,b,c) という量の性質を調べてみると、 実数倍λに対して、 V(λa,b,c) = V(a,λb, c) = V(a,b,λc) = λV(a,b,c) が成り立っていたり、 ベクトル u を足した場合に、 V(a+u, b, c) = V(a,b,c) + V(u,b,c) V(a, b+u, c) = V(a,b,c) + V(a,u,c) V(a, b, c+u) = V(a,b,c) + V(a,b,u) が成り立っていたりします。 ついでに、 V(a,b,c) = V(b,c,a) = V(c,a,b) も成り立ちます。 さて、V(a,b,c) を分解していくと、 V(a,b,c) = V(Σ[i] (ai)Ei, b, c) = Σ[i] (ai) V(Ei, b, c) のように計算できます。 ここで、Σ[i] は、i = 1~3 の和を取る記号としています。 同様に、b と c についても分解し、 V(a,b,c) = Σ[i] Σ[j] Σ[k] (ai)(bj)(ck) V(Ei, Ej, Ek) というところまで計算できます。 すると、単位ベクトル E1, E2, E3 が作る 平行六面体(立方体)の体積に係数を掛けたものの和 に分解できていることに気が付きます。 V(a,b,c) は、右手系のときに正、左手系のときに負としておくと、 V(E1,E2,E3) = V(E2,E3,E1) = V(E3,E1,E2) = 1 V(E1,E3,E2) = V(E2,E1,E3) = V(E3,E2,E1) = -1 となり、Ei, Ej, Ek のうちに同じベクトルがあるときは、 V(Ei, Ej, Ek) = 0 となります。 従って、V(a,b,c) の成分表示ができて、 V(a,b,c) = a1 b2 c3 + a2 b3 c1 + a3 b1 c2 - a1 b3 c2 - a2 b1 c3 - a3 b2 c1 であることが分かります。 これは、V(a,b,c) を行列式で書くこともできることを示しています。 行列 M を M[1,1]=a1, M[1,2]=b1, M[1,3]=c1, M[2,1]=a2, M[2,2]=b2, M[2,3]=c2, M[3,1]=a3, M[3,2]=b3, M[3,3]=c3. とおくと、その行列式 det(M) がまさに V(a,b,c) = det(M) です。 ここまできて、ようやく外積の成分表示を書き下す準備ができました。 a×b の x成分「(a×b)1」を取り出そうとするときは、 a×b と E1 の内積を取ればよいです。 (a×b)1 = E1・(a×b) = V(a,b,E1) なので、V(a,b,c) の成分表示に対して、 c1=1, c2=c3=0 を代入すればよくて、 (a×b)1 = a2 b3 - a3 b2 となります。同様に y成分と z成分も計算できて、 (a×b)2 = a3 b1 - a1 b3 (a×b)3 = a1 b2 - a2 b1 となります。つまり、 a×b = (a2 b3 - a3 b2, a3 b1 - a1 b3, a1 b2 - a2 b1) であることが分かりました。 -- 高野智暢