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2022.07.13
A-0137. 線形独立と一意性 — T.T
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 線形独立と一意性 発行:エスオーエル株式会社 https://www.sol-j.co.jp/ 連載「X線CTで高精度寸法測定!?」 2022年7月13日号 VOL.137 平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。 X線CTによる精密測定やアプリケーション開発情報などをテーマに、 無料にてメールマガジンを配信いたしております。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 線形独立(一次独立)という概念は、 数学的に物事を考える場面で、とても重要な基礎となる考え方です。 ベクトル X, Y, Z が「線形独立」であるとは、 αX + βY + γZ = 0 (ゼロベクトル) という式が α = β = γ = 0 のときに限って成り立つことです。 ここで、α, β, γ は、数(スカラー)です。 線形独立ではないときは、「線形従属」と言います。 つまり、α, β, γ の中に 0 でないものがあるときです。 線形従属の場合、例えば α≠0 のとき、 0 ではない数で他の数を割ることができるので、 X = (-β/α)Y + (-γ/α)Z とすることができます。 今、X, Y, Z が線形独立で、 それに V を加えた X, Y, Z, V が線形従属になるとします。 このとき、 αX + βY + γZ + δV = 0 という式を作ってみると、δ≠0 であることが言えます。 それは、もし δ=0 であれば、αX + βY + γZ = 0 となり、 X, Y, Z が線形独立であることから、 α = β = γ = 0 なのですが、 同時に、α = β = γ = δ = 0 となり、 X, Y, Z, V が線形従属という条件に反して 線形独立になってしまうからです。 何を言っているか分からないかもしれませんが、 ありのまま 今 起こったことを話すと、 δ=0 と仮に考えると、線形従属と思っていたら、 いつのまにか線形独立になっていた ということです。 (背理法の片鱗を味わって下さい。) 従って、ベクトル V が、 線形独立なベクトル X, Y, Z を使って、 V = aX + bY + cZ のように分解できることを示しています。 具体的には、今の場合、 a = (-α/δ), b = (-β/δ), c = (-γ/δ) です。 続いて、この表現の一意性を示してみます。 そのために、a, b, c という係数で分解できるだけでなく、 s, t, u という係数でも、 V = sX + tY + uZ という式のように分解できると考えます。 すると、 V - V = (a-s)X + (b-t)Y + (c-u)Z = 0 のように計算できます。 そして、X, Y, Z が線形独立なので、 (a-s) = (b-t) = (c-u) = 0 が言えます。 つまり、 a = s, b = t, c = u となってしまうので、 2通りの表現を用意したつもりが、同じものであることが分かり、 1通りの表現しかない(つまり、一意に決まる) ということが示せました。 更に、この表現の一意性は、X, Y, Z が線形独立であることと 同値(等価)であることが示せます。 ゼロベクトルを分解して、 0 = aX + bY + cZ と書いてみると、 aX + bY + cZ = 0X + 0Y + 0Z で表現できます。これが一意的に決まっているのであれば、 a = b = c = 0 のときに限って aX + bY + cZ = 0 なので、 X, Y, Z は線形独立です。 つまり、 V = aX + bY + cZ が一意に決まる ⇔ X, Y, Z は線形独立 が示せたことになります。 ちなみに、一つのベクトルについて考えてみると、 αX = 0 ⇒ α = 0 (スカラー) または X = 0 (ベクトル) なので、 αX = 0 かつ X ≠ 0 ⇒ α = 0 となり、ゼロベクトルではない一つのベクトル X は「線形独立」です。 一方、ゼロベクトルは、α ≠ 0 であっても α0 = 0 (ベクトル) なので、ゼロベクトルは「線形従属」です。 今回書いた内容は、数学のあらゆる分野で顔を出す基礎ですが、 ここで使ったロジック(証明)それ自体が楽しいものです。 -- 高野智暢