メールマガジン・新着情報一覧
- TOP
- メールマガジン・新着情報一覧
- A-0150. 円板のたわみと支持点に関する考察 — T.T
2023.10.11
A-0150. 円板のたわみと支持点に関する考察 — T.T
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 円板のたわみと支持点に関する考察 発行:エスオーエル株式会社 https://www.sol-j.co.jp/ 連載「X線CTで高精度寸法測定!?」 2023年10月11日号 VOL.150 平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。 X線CTによる精密測定やアプリケーション開発情報などをテーマに、 無料にてメールマガジンを配信いたしております。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 前回、「円板のたわみと支持点に関する考察」を書こうとして、 書き始めたら違う話になったという事を書きました。 そして、過去のレポートの使い回しは、 今後の時間がないときの穴埋めに使うと書きましたが、 すぐにその機会がやってきました。 円板のたわみは、よく遭遇する考察対象ですが、 自分はまだ現象の完全掌握に至っていません。 公式集から簡単な応用をしてみたり、 有限要素法の結果を見たりはできますが、 まだ円板のたわみと仲良くなれた気がしません。 少し前に、やりかけの計算とレポートを見つけたのですが、 ゆっくりと時間を取って考えるのは、まだ先になりそうです。 さて、円板のたわみを考える前に、 細長い棒で知られていることから始めます。 これから考えたいことは、支持点についてです。 細長い棒では、ベッセル点やエアリ点という位置が知られています。 【ベッセル点】 ベッセル点は、細長い棒において、 中立軸上の両端間距離が受けるたわみの影響を最小にする支持位置です。 両端の寸法を端面の中央で測定したときに、たわんでいない時と比較して、 長さの変化が最も少なくなる支持位置です。 つまり、自重でたわんだ状態のうちで、棒の長さが最大となる支持位置です。 (たわみ量は最小ではありません。) 棒の長さを L とすると、それぞれ両端から ≒ 0.22031 L の位置です。 【エアリ点】 エアリ点は、細長い棒において、 たわんだ棒の両端が平行になる支持位置です。 両端の寸法を測定するときに、端面が平行でないと、 端面のどこを測定したかによって結果が変わってしまいます。 そのため、平行な端面となる支持は、基準原器の測定に都合の良いものとなります。 JIS B7506 に、100mm以上のブロックゲージの標準姿勢として規定されています。 (たわみ量は最小ではありません。) 棒の長さを L とすると、それぞれ両端から ≒ 0.211325 L の位置です。 【最小たわみ支持点】 最小たわみ支持点は、細長い棒において、 棒のたわみが最小になる支持位置です。 このときは丁度、棒の中央と両端のたわみが等しくなります。 棒の長さを L とすると、それぞれ両端から ≒ 0.223149 L の位置です。 【細長い棒のたわみ方程式と解】 細長い棒の両端を支持したときのたわみを記述する方程式は、 (d^2 / dx^2) y = -w(Lx - x^2)/(2EI) です。 これは、w の等分布荷重によってたわんでいるときの式で、 L は棒の長さ、EI は棒に固有の定数で曲げ剛性 (ヤング率 E と断面二次モーメント I の積)、 x は棒の長さ方向で、y はそれに垂直なたわみ方向です。 この解は、 y = -w { (Lx^3)/6 - (x^4)/12 + c1 x + c2 } /(2EI) です。 積分定数の c1 と c2 は、境界条件(支持点の性質)で決まります。 注意すべきこととして、この式は万能ではなく、 弾性変形の範囲で、たわみが十分に小さい状況で使えます。 【円板のたわみ方程式と解】 円板を軸対称に支持したときのたわみを記述する方程式は、 (∂^4 / ∂r^4)u + (2/r)(∂^3 / ∂r^3)u - (1/r^2)(∂^2 / ∂r^2)u + (1/r^3)(∂/ ∂r)u = q/D です。 これは、q の等分布荷重によってたわんでいるときの式で、 r は円板の半径方向で、u はそれに垂直なたわみ方向です。 D は板の曲げ剛性で、t を厚み、ν をポアソン比、E をヤング率としたときに、 D = (Et^3)/{12(1-ν^2)} で表される板に固有の定数です。 この解は、 u = (qr^4)/(64D) + c1 + c2 log(r) + c3 r^2 + c4 r^2 log(r) です。 積分定数の c1, c2, c3, c4 は、境界条件(支持点の性質)で決まります。 ここでも注意すべきこととして、この式は万能ではなく、 弾性変形の範囲で、たわみが十分に小さい状況で使えます。 【端の単純支持による棒と円板のたわみ解の比較】 等分布荷重で、端を単純支持したときのたわみ方程式の解を 棒(y)と円板(u)で比較してみます。 境界条件を与えて、積分定数を決定することで、それぞれ、 y = (wx)( x^3 - 2Lx^2 + L^3 ) /(24EI) u = q(a^2 - r^2){ a^2 (5+ν)/(1+ν) - r^2 ) /(64D) のようになります。 ただし、a は円板の半径です。 式を比べてみて、棒と円板では結構様子が違うという印象です。 円板の支持点として、棒のベッセル点やエアリ点に対応する位置を (そこそこの量の)文献を当たって調べましたが、 丁度ぴったりの答えが載っているものは見当たりませんでした。 支持点位置を変数にして、境界条件を与えて、極値を求める等により、 求まりそうな感じがします。 というところで今は止まっています。 -- 高野智暢