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2024.01.10
A-0152. 共振の考え方— T.T
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 共振の考え方 発行:エスオーエル株式会社 https://www.sol-j.co.jp/ 連載「X線CTで高精度寸法測定!?」 2024年1月10日号 VOL.152 平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。 X線CTによる精密測定やアプリケーション開発情報などをテーマに、 無料にてメールマガジンを配信いたしております。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 今回は、共振とはどのような現象かを数式でみてみます。 まず、外力のない振動の微分方程式を書き下します。 例えば、バネ定数 k のバネに質量 m の物体を付けて振動させます。 バネは、距離に比例する力を物体に与えるので、 m(d^2/dt^2)x = -kx という微分方程式になります。 つりあいの位置からの距離 x は、時間の関数になっており、x(t) です。 2階微分方程式なので、 x(t)を2回微分して、定数倍された元の関数に戻ることから、 x(t) = A cos(ωt) + B sin(ωt) が一般解になります。 この解を方程式に代入して確認してみます。 左辺 = m(d^2/dt^2)x = -mω^2 {A cos(ωt) + B sin(ωt)} この左辺が右辺の -kx と等しくなるので、 -mω^2 {A cos(ωt) + B sin(ωt)} = -k{A cos(ωt) + B sin(ωt)} のようになり、 ω = √(k/m) であることが分かります。 一般解の A, B は、初期条件で決まる定数です。 では、この微分方程式に外力を加えてみます。 外力を F sin(Ωt) とすると、その強制振動の微分方程式は、 m(d^2/dt^2)x = -kx + F sin(Ωt) になります。 これを解くために、解の形を x(t) = C sin(Ωt) と仮定して代入してみます。 すると、 左辺 = m(d^2/dt^2)x = -mCΩ^2 sin(Ωt) 右辺 = -kC sin(Ωt) + F sin(Ωt) なので、左辺 = 右辺 から、 -mCΩ^2 sin(Ωt) = -kC sin(Ωt) + F sin(Ωt) となります。これが成り立つためには、 -mCΩ^2 = -kC + F であることから、 C = F/(k - mΩ^2) = (F/m)/(ω^2 - Ω^2) になります。 これにより、強制振動の微分方程式の解として、 x(t) = {(F/m)/(ω^2 - Ω^2)} sin(Ωt) があることが分かります。 そして、外力 0 のときの解と合わせて、 強制振動の一般解が x(t) = A cos(ωt) + B sin(ωt) + {(F/m)/(ω^2 - Ω^2)} sin(Ωt) であることが分かります。 (一般解を代入して、方程式が満たされることを確認できます。) では、この解の式から、共振とはどのような現象なのかをみるために、 (ω^2 - Ω^2) = 0 の場合を考えます。 すると、x(t) の振幅が無限大に発散していることが分かります。 つまり、強制振動の外力が、 Ω = ω = √(k/m) になっているとき、共振します。 共振は、起こらないようにすべき問題のときもあれば、 起こるようにすべき原理のときもあります。 いずれにしても、k か m (あるいは両方)を変化させることで、 調整することができます。 外力を変化させることができず、共振を止めたいとき、 m を変えることが対策になるということを 経験的に知ることもありますが、 数式で理解してあれば、見通しがよくなります。 さらには、力学的な現象に限らず、 抽象化した概念は、電気的現象や光学的現象など、 幅広く応用できるようになります。 -- 高野智暢