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2024.05.22
A-0155.ルジャンドル変換と双対性— T.T
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ ルジャンドル変換と双対性 発行:エスオーエル株式会社 https://www.sol-j.co.jp/ 連載「X線CTで高精度寸法測定!?」 2024年5月22日号 VOL.A-0155 平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。 X線CTによる精密測定やアプリケーション開発情報などをテーマに、 無料にてメールマガジンを配信いたしております。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 双対性(そうついせい)という考え方が好きです。 これまで何度も使ってきましたし、実際役に立ちます。 例を挙げると非常にたくさんありますが、 分かりやすいものは、やはり、フーリエ変換です。 実空間と呼ばれる世界で考えると複雑で解くのが難しい問題も、 フーリエ変換で、周波数空間と呼ばれる裏世界で操作した後、 逆フーリエ変換で元の実空間に戻ってくると問題が解けている という魔法のような手法です。 双対性というのは、 表世界と裏世界がお互いを支え合っているような状態です。 線形代数を勉強すると、 ベクトル空間とそれに作用する線形写像というものを考えます。 そして、線形写像の空間がやっぱりベクトル空間になっていて、 元のベクトル空間に対する「双対空間」と呼ばれるものになっています。 幾何学の問題を考えるとき、 大域的な性質(図形の全体的な性質)を調べるのに、 ホモロジーと呼ばれる理論を使うことがあります。 それとは違った視点で、 局所的な性質(図形の部分的な性質)を調べるのに、 コホモロジーと呼ばれる理論も使えます。 この、ホモロジー と コホモロジー は、裏表の関係で、 双対性で結びついていることが分かります。 裏のない表は存在できず、表のない裏も存在できない。 表と裏がそれぞれの存在を支え合っていて、 単独で存在する実体ではなく、関係性が意味を与えている という感じです。 ルジャンドル変換という考え方も双対性です。 点と線の双対性をつなぐ変換というイメージです。 大雑把に言うと、点で表現された形を線で表現された形に 翻訳するのがルジャンドル変換です。 点 (x,y) で表現された曲線があるとします。 その曲線の接線 y = αx + β を考えたとき、 曲線の全ての点における接線を集めると包絡線によって 元の曲線が表現できることが分かります。 そこで、点 (x,y) の代わりに 接線の傾きαと切片βの組 (α,β) を使っても その曲線を表現できるという仕組みです。 ルジャンドル変換は、ある関数が持つ変数の組を もっと都合の良い変数の組に置き換えて考えるときに使えます。 熱力学では、たくさんの関数や変数が出てきます。 その関係性をつなぐのがルジャンドル変換です。 また、これまでメルマガで、 ハミルトニアンやラグランジアンのお話を何度か書きました。 これらハミルトニアンとラグランジアンをつなぐのも ルジャンドル変換です。 当社では、ルジャンドル多項式という直交多項式系を よく使います。 可算無限で考えるフーリエ級数を 非可算無限に拡張するとフーリエ変換になります。 名前からその類似で、ルジャンドル多項式を拡張すると ルジャンドル変換になりそうですが、 同じ数学者の名前が由来でも、 ルジャンドル多項式とルジャンドル変換は別物です。 今回は、何も参照せずに、記憶にあるお話を適当に書いたので、 間違いが含まれているかもしれませんが、 楽しいお話だと思って読んで頂ければ幸いです。 -- 高野智暢