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2009.03.10
D-0002. 最大測定可能ソリ量 — TT
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 最大測定可能ソリ量 発行:エスオーエル株式会社 https://www.sol-j.co.jp/ 連載「知って得する干渉計測定技術!」 2009年3月10日号 VOL.002 平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。 干渉計による精密測定やアプリケーション開発情報などをテーマに、 無料にてメールマガジンを配信いたしております。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 干渉計で表面形状を測定する際に、気になることとして、 分解能、精度、ダイナミックレンジ 等が挙げられます。 平面度測定において、実際に興味のあるダイナミックレンジとは、 どこまで大きく反ったものが測定できるか、つまり最大測定可能ソリ量です。 今回は、この最大測定可能ソリ量について考察することにします。 まず、最大測定可能ソリ量を計算する上で欠かせないのが、 ローカル スロープ リミット(LSL)です。 これは、CCDカメラの2ピクセルに干渉縞が1本以上入り、 高さ情報をサンプリングできなくなる条件です。 LSL [um/mm] = (1/2) × Sensitivity [um/fr] ÷ 横分解能 [mm/pixel] で表されます。 Tropel平面度測定機FlatMaster のLSLを計算すると、次のようになります。 測定物直径:横分解能:LSL(S=1.5):LSL(S=4.0):LSL(S=9.0) 50mm : 0.13 : 6.0 : 16.0 : 36.0 100mm : 0.25 : 3.0 : 8.0 : 18.0 150mm : 0.38 : 2.0 : 5.3 : 12.0 200mm : 0.50 : 1.5 : 4.0 : 9.0 ただし、SはSensitivity(縞感度)を表します。 それでは、このLSLをもとに、最大測定可能ソリ量を計算してみましょう。 1)放物線状ソリ形状 測定物の形状が放物線状であったと仮定して、計算してみます。 zを高さ、xを横方向、aを係数とすれば、放物線は、 z = ax^2 で表されます。 このとき、各点における局所勾配は、微分 dz/dx ですので、 dz/dx = 2ax となります。 測定物のx座標がpのときにLSLに達したとします。式で書くと、 LSL = 2ap です。これをaについて解けば、 a = LSL / (2p) となります。これらを元の放物線の式に代入すると、 最大測定可能ソリ量 Z_max [um] が求まります。 Z_max = (LSL / (2p))p^2 = (p/2) × LSL 測定物の中心を放物線の頂点として、pには測定物の半径、 LSLには、上記の表の数値を代入することで、 最大測定可能ソリ量 Z_max [um] の表ができます。 測定物直径:Z_max(S=1.5):Z_max(S=4.0):Z_max(S=9.0) 50mm : 75.0 : 200.0 : 450.0 100mm : 75.0 : 200.0 : 450.0 150mm : 75.0 : 200.0 : 450.0 200mm : 75.0 : 200.0 : 450.0 表を見てお分かりの通り、ソリ形状が放物線状の場合、最大測定可能ソリ量は、 測定物の大きさに依らず、Sensitivityのみで決まってしまいます。 (これは、横分解能が測定物直径で決まるので、うまくキャンセルしてしまうためです) 2)円弧状ソリ形状 続いて、測定物の形状が円弧状であったと仮定して、計算してみます。 zを高さ、xを横方向、rを曲率半径とすれば、円の方程式は、 x^2 + (z - r)^2 = r^2 ですので、下半分の円弧の方程式は、 z = r - √(r^2 - x^2) です。 このとき、各点における局所勾配は、微分 dz/dx ですので、 dz/dx = x / √(r^2 - x^2) となります。 測定物のx座標がpのときにLSLに達したとします。式で書くと、 LSL = p / √(r^2 - p^2) です。これをrについて解けば、 r = p × √(1 + 1/(LSL)^2 ) となります。これらを元の円の式に代入し、 最大測定可能ソリ量 Z_max [um] が求まります。 Z_max = p × √(1 + 1/(LSL)^2 ) - √( p^2 × (1 + 1/(LSL)^2 ) - p^2 ) = p × √(1 + 1/(LSL)^2 ) - p / (LSL) pには測定物の半径、LSLには冒頭の表の数値を代入することで、 最大測定可能ソリ量 Z_max [um] の表ができます。 測定物直径:Z_max(S=1.5):Z_max(S=4.0):Z_max(S=9.0) 50mm : 74.9993 : 199.9872 : 449.8543 100mm : 74.9998 : 199.9968 : 449.9636 150mm : 74.9999 : 199.9986 : 449.9838 200mm : 75.0000 : 199.9992 : 449.9909 今度は放物線の場合と異なり、測定物直径に依存した結果になります。 しかし、結果はほぼ、 Z_max(S=1.5) = 75 um Z_max(S=4.0) = 200 um Z_max(S=9.0) = 450 um としてしまっても良い感じです。 これは、円の方程式をテーラー展開し、 測定物直径に対してソリ量が十分小さいとして、高次の項を落とせば、 放物線と同じ式になることからも確かめられます。 ただ、実際の測定となると、形状も理想的ではありませんし、条件も様々です。 しかし、上記で求めた理論値を目安にして、実際の測定に臨むことができるはずです。 -- 高野智暢