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2009.04.10
D-0003. 縞感度の概要と式の導出 — TT
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 縞感度の概要と式の導出 発行:エスオーエル株式会社 https://www.sol-j.co.jp/ 連載「知って得する干渉計測定技術!」 2009年4月10日号 VOL.003 平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。 干渉計による精密測定やアプリケーション開発情報などをテーマに、 無料にてメールマガジンを配信いたしております。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 縞感度(Sensitivity)は、干渉計で形状を測定する上で、キーになる要素です。 今回は、縞感度の概要と式の導出を解説致します。 【縞感度とは】 干渉計で測定面を観察した場合、明暗の縞模様が見えます。 これを干渉縞を言いますが、ちょうど地図における等高線と同じ役割を果たします。 このとき、縞と次の縞(例えば暗と次の暗)の位置における高さの差 を縞感度と呼びます。 例えば、3umの窪みがあり、1.5umの縞感度で見ると、 縞は2本見えることになります。(um = ミクロン) 縞感度は、光の干渉条件で決まりますので、 基本的に波長と入射角度によって決まってしまいます。 【垂直入射における縞感度の式】 光を測定面に垂直に入射させた場合の干渉条件を考えます。 干渉させるためには、参照光と測定光に波面分割する必要があります。 測定光を測定面に照射し、そこからの反射光と参照光をもう一度合わせることで、 干渉縞ができます。 今、説明のためにxyz座標を設定します。 平面波が、xy平面と平行に入射し、z = 0 上で波面分割したとします。 z = g の位置に測定面があったとします。 より明確に、z = g から z = g + S の範囲に 測定面の最高点と最低点があったとします。 z = 0 から測定面に向かい、z = g で反射して帰ってきた光は、 参照光より 2g だけ余計に進んだことになります。 これを光(A)と呼びましょう。 一方、z = 0 から測定面に向かい、z = g + S で反射して帰ってきた光は、 参照光より 2g + 2S だけ余計に進んだことになります。 これを光(B)と呼びましょう。 ついでに参照光を光(R)と呼ぶことにします。 (A)+(R)による干渉で、光強度が暗になったとします。 (参照光と2gの光路長差で暗になるということです。) Sとして、ちょうど次の縞が出る条件、つまり、縞感度分だけ離れた条件を選びます。 (B)+(R)による干渉が次の暗になるということは、 光の波長をLとして、 2S = L になっているということです。 これは、光(A)と光(B)の光路長差が1波長分という条件です。 ( 2g+2S - 2g = L ということです。 ) これにより、垂直入射では縞感度が、 S = L/2 という、良く知られた式になります。 【斜入射における縞感度の式】 入射角t で測定面に入射している場合を考えます。 まず、z = g, x = 0 の位置で反射する光(A)を考えます。 垂直入射と同じように考えたいのですが、 z = g + S で反射する場合は、斜入射なので x = c だけ横にずれます。 この z = g + S, x = c で反射する光を光(B)と呼ぶことにします。 光(A)の反射位置 P (z = g, x = 0) と光(B)の反射位置 Q (z = g + S, x = c)、 及び点 N (z = g, x = c) は、 直角三角形PQN をつくります。 辺PN の長さは c、辺QN の長さは S、辺PQ と 辺QN の成す角度は t です。 さらに、辺PQ の長さを b と置きます。 光(B)が反射して z = g に戻ってくる位置をU とすると、 ここにも直角三角形UQN ができます。 (U は z = g, x = 2c の位置です。) 辺UN の長さは c、辺UQ と 辺QN の成す角度は t、辺UQ の長さは b になります。 さて、光(A)と光(B)の光路長差が1波長分という条件を式にしたいのですが、 そのために、反射した後の光(A)に向かって、点U より垂線を下ろします。 この交わる点を M とし、PMの長さを a としましょう。 すると、光(A)が P→M と進むとき、光路長は a であり、 光(B)は P→Q→Uと進むので、光路長 2b となります。 ようやく、光(A)と光(B)の光路長差が1波長分という式、 2b - a = L (式1) が得られます。 式から a,b,c を消去し、S と L の式を作りたいので、 まず、直角三角形という条件から、次の式が立ちます。 a = 2c sin t (式2), c = b sin t (式3), S = b cos t (式4). (式1)に(式2)を代入して、 2b - 2c sin t = L となり、これに(式3)を代入すると、 2b - 2b sin^2 t = L となります。 1 - sin^2 t = cos^2 t という関係式を使えば、 2b cos^2 t = L となり、これに(式4)を代入すれば、 2S cos t = L を得ます。従って、 S = L / (2 cos t) という斜入射における縞感度の式が得られます。 実際、この式に t = 0 を代入すれば、cos 0 = 1 ですから、 S = L/2 という垂直入射の式に一致します。 ここまで、テキストの制限上、すべて文章で説明してきましたが、 作図すれば、もう少し分かり易いかと思います。 また、一度この流れで理解しておけば、何がどうなっているのか分かりますので、 もう少しエレガントな導出も可能かもしれません。 以上、長々と S = L / (2 cos t) を導出しましたが、 この式を基に、様々な現象が説明できるようになります。 -- 高野智暢