メールマガジン・新着情報一覧
- TOP
- メールマガジン・新着情報一覧
- D-0004. 空間コヒーレンス調整による二次フリンジ除去 — TT
2009.05.10
D-0004. 空間コヒーレンス調整による二次フリンジ除去 — TT
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 空間コヒーレンス調整による二次フリンジ除去 発行:エスオーエル株式会社 https://www.sol-j.co.jp/ 連載「知って得する干渉計測定技術!」 2009年5月10日号 VOL.004 平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。 干渉計による精密測定やアプリケーション開発情報などをテーマに、 無料にてメールマガジンを配信いたしております。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 透明な物体の平面度を干渉計で測定しようとする場合、 測定したい表面の干渉縞の他に裏面からの光の反射による干渉縞が出てきます。 これは二次フリンジと呼ばれ、表面の干渉縞を解析する際の障害となります。 二次フリンジを消去する方法には、 ・空間コヒーレンスを調整する ・入射角を最適化し、表面の反射率を高くして裏面からの反射光の影響を低減する ・Corning Tropelの特許であるFFT解析ソフトにより分離する 等があります。 今回は、このうちの「空間コヒーレンスを調整する」に焦点を当てます。 実は、空間コヒーレンス調整で二次フリンジが必ずしも除去できるわけではありません。 以下で、二次フリンジ除去が可能な条件を、具体例を計算しながら解説致します。 【状況設定】 透明な基板の厚みを x [um] 、屈折率を n とします。 具体的にガラスを想定し、n=1.5 で計算を進めることにしましょう。 干渉計の参照平面からギャップ g [um] を空け、透明基板をセットします。 入射光が参照平面の 点O で反射した光線を 光R とします。 点O では同時に波面分割が起こり、参照平面からギャップ中へ透過します。 透過光は、測定表面の 点F1 に到達します。 垂直入射では、点Oと点F1 は参照平面の垂線上に乗りますが、 斜入射を考えると、横方向に 距離a だけズレた位置が 点F1 になります。 点F1 でも波面分割により、反射光と透過光に分かれます。 反射光は参照平面の 点P1 に向かいます。 点P1 は、点O から横に 2a ズレた位置です。 この点P1を通った光線を 光U とします。 点F1の透過光は、透明基板中を通り、裏面の 点B で反射し、 表面の 点F2 を通ります。 点F2は、点F1から横に 2b だけズレた点です。 点F2を出た光は、参照平面の 点P2 を通ります。 このとき、点P2は点P1から横に2bずれた点になります。 点P2を通った光線を 光V とします。 入射角も設定しておきます。 点F1での入射角を t1、点B での入射角を t2 とします。 【具体例計算】 空間コヒーレンス調整では、干渉性を変えることができます。 空間的に離れた光の干渉をなくすことができます。 今、問題となるのは、光Rと光Uの距離 L1、及び光Uと光Vの距離 L2 です。 平面度測定に必要なのは、光Rと光Uの干渉です。 従って、二次フリンジとなる光Uと光Vの干渉を消したいのです。 そのためには、L1 < L2、 つまりL2がL1より大きく、空間コヒーレンス調整で二次フリンジだけが 先に消える条件になっていれば良いのです。 具体的にギャップが g=200um のとき、 二次フリンジが消せる基板の厚みxを求めてみます。 波長=0.6328um の光を使うことを考えます。 このとき、縞感度S は、 S = (0.6328)/(2 cos t1) です。従って、 t1 = cos^(-1) (0.6328/2S) となります。また、スネルの法則 sin t1 = n sin t2 より、 t2 = sin^(-1) ( (sin t1)/1.5 ) です。これらの対応を表にまとめると、次のようになります。 S [um/fr] : t1 [deg] : t2 [deg] 0.4 : 37.7 : 24.1 1.2 : 74.7 : 40.0 4.0 : 85.5 : 41.7 8.0 : 87.7 : 41.8 さて、実際に作図すれば、距離aとb は求まります。 a = g tan t1 b = x tan t2 これにより、L1とL2も求まり、 L1 = 2a cos t2 = (2g tan t1) cos t2 L2 = 2b cos t2 = (2x tan t2) cos t2 となる。(参照平面内側もn=1.5のガラスと考えている。) L1 = L2 となるのは、2x tan t2 = 2g tan t1 のときなので、 x = g tan t1 / tan t2 である。各縞感度に対する表にすると、次のようになる。 S [um/fr] : x [um] 0.4 : 346 1.2 : 871 4.0 : 2852 8.0 : 5569 これにより、このxより薄い透明基板は、 空間コヒーレンス調整で二次フリンジを消すことができないことが分かります。 実際に測定する透明基板の屈折率nはものによって異なります。 また、ギャップgも多少の調整は可能です。 原理的にできないことが分かれば、他の方法を選択することになります。 我々は、まずこのような理論値を計算し、必要があれば実験でデータを収集し、 どのような測定方法があるのかを検討し、お客様に提案しています。 -- 高野智暢