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2009.06.10
D-0005. ハーモニック解析と加速度解析および新製品のご紹介 — TT
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ ハーモニック解析と加速度解析および新製品のご紹介 発行:エスオーエル株式会社 https://www.sol-j.co.jp/ 連載「知って得する干渉計測定技術!」 2009年6月10日号 VOL.005 平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。 干渉計による精密測定やアプリケーション開発情報などをテーマに、 無料にてメールマガジンを配信いたしております。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ ハーモニック解析と加速度解析 今回はアプリケーション事例として、 ハードディスク(HDD)構成部品の測定解析の一部を取り上げます。 HDD部品において、干渉計を用いて測定される項目はいくつかあります。 分かりやすい例では、まさにディスクや部品の平面度です。 その他にも管理されている項目はありますが、 ここでは、問題解決の手掛かりとして有益な解析方法として、 ハーモニック解析と加速度解析を解説したします。 【ハーモニック解析】 ハーモニック解析は、スペーサ等の表面形状から ディスク変形に影響のある形状成分を分離して解析する機能です。 表面形状を干渉計で取得した後、解析は次のように行われます。 ① 座標設定 HDD部品なので、リング(アニュラス)を考えます。 その中心を原点とし、極座標(r,θ)をとります。 ② 関数f(θ)を算出する。 f(θ)は角度θに関する関数です。 各θに対して、半径方向の断面を取り、その形状から値f(θ)を計算したものです。 f(θ)の取り方にはいつくか方法があります。 その断面の最大値をとる方法や平均値をとる方法などです。 ここでは、スペーサがディスクに接触するのが断面の最高点と仮定し、 その関数をf_max(θ)とします。 ③ 三角関数で展開する。 f_max(θ)をフーリェ級数展開します。 f_max(θ) = a0 + a1 cosθ + b1 sinθ + a2 cos 2θ + b2 sin 2θ + a3 cos 3θ + ... このとき、各項θの前の数字は、ちょうど円周上の波の山の数に相当します。 円周上の形状が様々な波長の波の重ね合わせに展開されるわけです。 ④ 必要な項を分離する。 スペーサ等をディスクに密着させることを考えます。 A) 細かい波(山の多い波)は、ディスクに接触しない。 B) 大きな波(山の少ない波)は、ディスク形状にならう。 上記AとBのような状況が考えられます。 そこで、製品性能に影響のある波の範囲を知ることができれば、強力な指標になります。 例えば、2~12山の範囲を抽出するとか、 5山と6山をそれぞれ抽出して解析ということもできます。 ディスクに転写されるスペーサ等の形状成分がどの範囲の波であるかは、 一概には言えません。 次に紹介する加速度解析と組み合わせ、実験的に探す方法が考えられます。 【加速度解析】 加速度解析は、ディスクとヘッドの衝突の要因となる力を解析する機能です。 ヘッドは、ディスクの回転による“空気の層”が押し上げる力Hで浮いています。 ヘッドとディスクが一定間隔を保っている時は、 ヘッドが空気の層を押す力Gと力Hが釣り合っています。 今、ディスクが z(r,θ) で表される形状(高さ)を持っているとします。 ディスクは高速で回転しているので、 ヘッドの位置は変わらず、ディスクだけが回転していると考えます。 解析ソフトに回転数(RPM)を入力することで、 角度θを時間tに読み替えることができます。 ニュートンの運動方程式によれば、力Fは加速度に比例します: F = m d^2 z / dt^2 つまりzのθによる2階微分に比例する力が、力GとHの釣り合いを壊し、 ディスクとヘッドの衝突の要因となる力になります。 平面度がある程度良くても加速度が大きければ、衝突の可能性があるということです。 逆に、加速度を管理すれば、平面度のスペックを緩められるかもしれません。 zはrの関数にもなっていますが、 ハーモニック解析を先に行うことで、rについては一定となります。 比例係数mは様々な要因を含んでいるため、簡単には決まりません。 しかし、加速度と製品の良不良との相関を知ることができれば、 必ずしもmは必要ありません。 ここでは、スペーサ等がディスクに与える変形の影響を考えましたが、 ディスク自体のハーモニック解析や加速度解析も有効と考えられます。 【新製品MSP】 今までの干渉計では、いくつもの面が段になっているとき、 それらの平面度、平行度、深さ/高さ の測定には問題がありました。 独立した面が二つ以上あり、高さが異なる場合、 干渉計で高精度な測定は無理と諦めてしまわれるケースも多いのではないでしょうか。 全く新しい干渉計 Tropel FM MSP では、独立したいくつもの面を同時に測定できます。 HDD部品を測定した実績も御座いますので、 今回ご紹介したハーモニック解析や加速度解析と組み合わせると 応用が広がるのではないでしょうか。 また、ハーモニック解析や加速度解析、そしてMSPは、HDD部品に限らず、 アイデアがあれば、その他多くの測定や問題解決にお役に立てると考えております。 (特にハーモニック解析は、抽出してみて初めて分かる事が得られることがあります。) MSPに関しましては、一言で語り尽くせない点も多々ありますので、 是非、お電話やメール、Webページ等からお問い合わせ下さい。 弊社Webページにも、簡単な紹介が御座います。 このメールマガジンでも、今後MSPを取り上げていければと思っております。 -- 高野智暢