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2010.01.10

D-0010. 焦点深度の式の導出 — TT

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焦点深度の式の導出

発行:エスオーエル株式会社
https://www.sol-j.co.jp/

連載「知って得する干渉計測定技術!」
2010年1月10日号 VOL.010

平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。
干渉計による精密測定やアプリケーション開発情報などをテーマに、
無料にてメールマガジンを配信いたしております。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願い申し上げます。


今回も、平面度測定に関する情報をお届けいたします。

そもそも何故、平面度などというものを測定しなければならないのか。
その理由は様々ですが、半導体露光プロセスにおいては、その理由は明確であり、
特に厳しい平面度管理が要求されます。

該当する対象物には、ウェーハやチャック、フォトマスクなどが挙げられますが、
半導体製造の原版となるフォトマスクの平面度は、最も重要視されるものであり、
高精度と言われている平面度測定機 FlatMaster でも限界があり、
超高精度な平面度測定測定機 UltraFlat が必要とされています。


【リソグラフィの基本式】

半導体の微細化は、

解像度 = k1 × λ/(NA)

という式に従って、技術革新が進んでいます。

端的に言うと、解像度を上げるには、比例定数 k1 を小さくするか、
光の波長 λ を短くするか、開口数 NA を大きくするかしかありません。

この式は、2つのエアリーディスクの重なりから、
2点を分解できる限界を求めることによって導出することができます。


さて、リソグラフィでは、もう一つ重要な式があります。
焦点深度 DOF に対して、比例定数を k2 として、

DOF = k2 × λ/(NA)^2

という式です。

この式が成り立つので、λやNAによって解像度を上げると焦点深度が浅くなっていきます。
焦点深度が浅くなれば、当然、各要素に割り当てられた平面度のマージンも小さくなります。
従って、微細化を進めていけば、平面度の管理は厳しくなっていくという図式ができます。



【状況設定】

今回は、焦点深度の式の導出をしてみましょう。
まず、そのための状況設定を行います。

光軸上に 点A と 点C を取ります。
波面として、点Cを中心に、点Aを通る円弧を描いておきます。

円弧上の点R を取り、∠RCA = θ とおきます。
(円なので、RC = AC です。)

さて、像点を 点C から 点Aの方向に Δz だけ動かし、点B に移動したことを考えます。
そのとき、波面が円弧 RA から QA にずれたとします。
(Δzは微小移動なので、点Qは、直線RC上の点Rのすぐ内側にあるとします。)

∠QBA = θ’、 ∠CQB = δ とします。
また、点B から直線RC (= 直線QC) に下ろす垂線と 直線RCとの交点を 点M とします。

屈折率は、nで計算しても n=1 で計算しても、得られる結果は同じですので、n=1 としておきます。



【導出】

像点移動による波面収差 ΔW がレイリー限界 λ/4 以下という条件で、式を導出します。

波面収差は、
ΔW = RQ = RC - QC
と表せます。

θ≫δ なので、QM = QB = AQ が言えて、

QC = AB + Δz cosθ
= (AC - Δz) + Δz cosθ

となります。従って、

ΔW = RC - QC
= AC - (AC - Δz + Δz cosθ)
= Δz - Δz cosθ
= Δz (1 - cosθ)

です。
今、ΔW = λ/4 とすると、Δz (1 - cosθ) = λ/4 ですから、

Δz = λ/4(1 - cosθ)

になります。
ここで、cos^2 θ + sin^2 θ = 1 より、 cosθ = √(1 - sin^2 θ) ですが、

√(1 - x) = 1 - (1/2)x + ...

とテーラー展開できることを思い出すと、(上の式で、 x = sin^2 θ として、)

1 - cosθ = 1 - √(1 - sin^2 θ)
= 1 - (1 - (1/2) sin^2 θ)
= (1/2) sin^2 θ

とできます。従って、

Δz = λ/(4 × (1/2) sin^2 θ)
= λ/(2 sin^2 θ)

を得ます。
今、開口数は NA = sinθ であり、Δz が DOF となるので、

DOF = λ/2(NA)^2

となります。

さて、実際のリソグラフィ工程では、多くのパラメータが DOF に寄与します。
そこで、λ/(NA)^2 の比例定数(上記の導出では、1/2 となった)をまとめて、
k2 と表すことにします。

以上より、

DOF = k2 × λ/(NA)^2

が得られました。



DOFの式は、リソグラフィに携わっておられる方にとっては常識的な式です。
しかし、導出は省いて使っておられる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

さらには、リソグラフィから少し遠い所にいらっしゃるサプライヤの方々にとっては、
平面度が重要視されていることは知っていても、上記のような式がその根底にあることは、
案外知られていないかもしれません。


コストをかけて測定するには、それなりの理由があります。
なぜ測定が要求されるのか、少し立ち止まって理由を考えてみるのも良いのではないでしょうか。


--
高野智暢

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