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2010.03.10
D-0012. 平面度測定機UltraFlatのUncertainty計算解説 — TT
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 平面度測定機UltraFlatのUncertainty計算解説 発行:エスオーエル株式会社 https://www.sol-j.co.jp/ 連載「知って得する干渉計測定技術!」 2010年3月10日号 VOL.012 平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。 干渉計による精密測定やアプリケーション開発情報などをテーマに、 無料にてメールマガジンを配信いたしております。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 超高精度平面度測定機 UltraFlat における Uncertainty(不確かさ)計算では、 測定誤差の要因をより細かく分析し、超高平坦マスクに対応できるように、 U = 2 × √( u1^2 + u2^2 + u3^2 + u4^2 + u5^2 ) を用いています。以下で、上式の意味及び各項の解説を致します。 まず、Uとして計算している量は、「拡張不確かさ」と呼ばれるものです。 掛けている2は、包含係数と呼ばれているものであり、信頼水準に対応しています。 包含係数を大きく取れば信頼水準は高くなりますが、 マスク供給側から見ると保証するためにコストが上がると考えられます。 また、2を3に引き上げたところで、 Uは1.5倍に膨らむ一方、信頼水準は数%しか向上しません。 マスクユーザー側との協議によっては、 包含係数を2より小さく設定することも可能かもしれません。 装置メーカーとしては、最も標準的に使用されている包含係数2を採用しています。 次に各項ですが、第1項 u1 から 第5項 u5 までそれぞれ「標準不確かさ」と呼ばれる量です。 これらの二乗和の平方根(つまり、上式Uを包含係数2で割った量)は、 「合成標準不確かさ」と呼ばれる量になります。以下で各項の解説をしていきます。 ★ 第1項 u1 : Measurement Repeatability Verification Deviceを25回連続(Dynamic)測定し、 標準偏差σを計算した値を代入します。 ★ 第2項 u2 : Reference Flat 形状の寄与 Reference Flatは基準平面であり、理想的には平面度0です。 しかし、高精度に加工された基準原器ではありますが、 工業製品である以上僅かな凹凸を持っています。 その精度に応じてλ/100やλ/40などのグレードがあります。 さて、このReference Flatが測定に与える影響ですが、 マスク形状に対して統計的に一様な確率分布となります。 矩形(一様)分布の場合、標準偏差は次のように計算されます。 s = √( E[X^2] - (E[X])^2 ) = √( ∫(x^2)/(2a) dx - (∫x/(2a) dx)^2 ) = √( (a^3 + a^3) / (6a) ) = a/√3 ただし、積分範囲は[-a,a]です。 ここで、E[X]は期待値、a はReference Flatの保証値です。 つまり、Reference Flat保証書の値が6nmであれば、第2項には、 u2 = 6/√3 = 3.46nm が代入されます。 ★ 第3項 u3 : Reference Flat Calibrationとカメラ解像度等の寄与 この項には、Tropelにて測定・計算された数値を代入します。 Reference Flat Calibrationは、 NISTで定められた方法により極めて慎重に測定されていますが、 それでも不確かさを含んでいます。 Tropelにてこの測定による影響を計測した結果、1nm以下であることが分かっています。 さらに、CCDカメラ(1kカメラは10bit解像度中、約2bitのノイズを含みます。)や コンピュータによる解析アルゴリズム(位相シフト解析、平均化、コントラストレベル等) に起因する影響も計算されています。 これらも矩形分布となり、その範囲は±0.20nm以下でした。 第2項同様に標準偏差を計算すれば、0.2/√3 = 0.12nm 以下です。 これらReference Flat Calibrationとカメラ解像度等の寄与は、 計算の結果、合計しても u3 = 1nm を超えません。 ★ 第4項 u4 : 干渉計ゲイン誤差 この項は、Verification Deviceを25回連続(Dynamic)測定して計算したAccuracyから、 保証しようとするマスクの平面度 TIRmask に応じて影響する誤差を計算します。 まず、25回連続測定した結果の平均値Verdepを計算します。 そこからNISTで値付けされた数値NISTVerdepを引いた値がAccuracyです。 Accuracy = Verdep - NISTVerdep さて、Verdepの平面度を持った原器で測定したAccuracyが値cだったとします。 これは、ゲイン誤差ですから、もっと平面度の良いマスクを測定すれば、 ゲイン誤差の影響は小さくなっていくはずです。 Verdepと同じ平面度のマスクでは影響はc程度と考えられますが、 Verdepの半分の平面度のマスクを測定すれば、影響はc/2になると考えられます。 つまり第4項 u4 は、 u4 = Accuracy × TIR(mask) / Verdep で計算されることになります。 ★ 第5項 u5 : NISTトレーサブル・キャリブレーションデバイスからの誤差 上記第4項と同じ状況は、キャリブレーションデバイスの値付けをするときにも生じます。 第5項には、Tropelで測定された結果を代入します。 NISTトレーザブルな3000nm原器で、 キャリブレーションデバイスの値付けをする干渉計のUncertaintyを計算した結果は、 U(NIST) = 50nm でした。従って、 u5 = U(NIST) × TIR(mask) / Verdep(NIST) = 50 × TIR(mask) / 3000 = TIR(mask) / 60 に代入することで、 保証しようとするマスクの平面度 TIR(mask) に応じた影響が計算できます。 -- 高野智暢