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2010.06.10

D-0018. フィルタの種類と特徴 — TT

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フィルタの種類と特徴

発行:エスオーエル株式会社
https://www.sol-j.co.jp/

連載「知って得する干渉計測定技術!」
2010年6月10日号 VOL.018

平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。
干渉計による精密測定やアプリケーション開発情報などをテーマに、
無料にてメールマガジンを配信いたしております。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



前回、フィルタの働きについて触れました。
その続きとして、実際のフィルタをいくつかみてみることにしましょう。


<メディアン フィルタ>

CCDカメラを検出器として使う場合、特有のノイズが乗ることが知られています。
何も信号を受けていないのに、ランダムな微小出力がある「暗電流」が有名です。
またCCDは、ピクセルに分割して信号を受けていますが、
様々な理由でランダムなスパイク状のノイズが乗りやすいデバイスです。

そこで、CCDでデータ取得した際の最初の処理としては、メディアンフィルタが有効です。
滑らかな連続データを取得したはずなのに、
CCDという検出器を使ったがために乗るスパイク状のノイズ除去に効果を発揮します。

3×3のピクセルを考えます。

z1; z2; z3;
z4; z5; z6;
z7; z8; z9;

メディアンフィルタは、まずz1~z9の数値データを大きい順に並べ変えます。
そして、その中心値をz5の位置のデータとして置き換えます。
これを全ピクセルに対して行います。
こうすることで、スパイク状に乗った異常値を除去できるのです。



<ガウシアン フィルタ>

ガウシアンフィルタは、「指定した波長λより短波長の成分をカットする」
という、物理的な意味が明確なフィルタとして重宝されています。

得られた形状データ S(x,y) に重み関数 G(x,y) を掛けて平均化していきます。
この重み関数は、

  G(x,y) = 1/(aλ) exp( -π(x^2 + y^2)/(aλ)^2 )

という形をしています。
aは定数で、 a = 0.4697 です。


以下、説明が煩雑になるので、1次元で考えます。
( x を x,y の2変数に拡張するのは、さほど困難ではありません。 )

1次元で書くと、形状データはS(x)、重み関数G(x)は、

  G(x) = 1/(aλ) exp( -π(x^2)/(aλ)^2 )

となります。

平均化していくと述べましたが、
計算するには、畳み込み(コンボリューション)をする必要があります。
式で書くと、

  S*G(x) = ∫S(u)G(x-u)du

です。積分範囲は、(-∞,∞) です。

実際には、CCDからの離散データの畳み込みになりますので、

  S*G(n) = ΣS(k)G(n-k)

を実行することになります。
(和は k=0 から N-1 まで取ることになります。)


さて、話題はいろいろ広げられそうですが、
今回は、定数 a = 0.4697 を取り上げてみましょう。

この定数にはどのような意味があるのでしょうか?

aを未知の定数として、
振幅 A0、波長λ0 の正弦波が、G(x)によってどう変化するか計算してみます。

答えを書いてしまうと、フィルタが掛かった後の振幅 A1 は、

  A1 = A0 exp( -π(aλ/λ0)^2 )

となります。

さて、丁度 λ0 = λ のとき、
振幅伝達率 A/A0 が 50% (つまり 1/2)になるようにしたいと考えます。
実は、これがとても重要です。
短波長成分と長波長成分がきれいに分離され、
形状が変形することなく再現されるための条件なのです。

後は、exp( -πa^2 ) = 1/2 を解けばよいだけなので、

  a = √log 2 / √π

となり、a = 0.46971... となることが分かります。



フィルタは奥が深く、なかなか敬遠されがちですが、
適切に使用することは、測定にとって非常に重要な課題の一つとなります。

また、話自体は小難しくても、実際に使ってみると大したことはありません。


測定でお困りのことが御座いましたら、
是非一度弊社までお問い合わせしてみて下さい。


--
高野智暢

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