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2010.10.10
D-0027. 材料力学(vol.003):保持方法による変形とてこの原理 — TT
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 材料力学(vol.003):保持方法による変形とてこの原理 発行:エスオーエル株式会社 https://www.sol-j.co.jp/ 連載「知って得する干渉計測定技術!」 2010年10月10日号 VOL.027 平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。 干渉計による精密測定やアプリケーション開発情報などをテーマに、 無料にてメールマガジンを配信いたしております。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 「保持方法による変形」シリーズの3回目です。 これまでの2回で、 「応力」、「ひずみ」、「ヤング率」、「中立軸」、「曲げ応力」 といった基礎となる考え方をご紹介しました。 023. 保持方法による変形とフックの法則 025. 保持方法による変形と曲げ応力 今回も基礎的な話として、 「曲げモーメント」、「断面二次モーメント」、「曲げ剛性」 の考え方をご紹介致します。 基礎の積み重ねだけだとウンザリしてしまうので、 当面の目的地を「自重によるたわみの見積り方」に設定します。 ここに辿り着くには、もう少し回数が必要ですが、 行き先が分かると多少進む気力が出てくるでしょうか。 <てこの原理> さて、今回の話題には「モーメント」という言葉が出てきます。 「曲げモーメント」と「断面二次モーメント」は別物ですが、 同じ言葉が付いています。 そこで、まずは「モーメント」とは何だろうから始めます。 ここで思い出して頂きたいのが、「てこの原理」です。 1本の棒に支点を与え、 支点からの距離が d1 の位置に重さ W1 のおもりを乗せます。 すると、支点からの距離が d2 の位置に力 W2 を加えれば、 つりあいます。式で書くと、 d1 × W1 = d2 × W2 です。 例えば、d1 = 5cm に W1 = 10kg重 のおもりを乗せれば、 d2 = 20cm の位置を W2 = 2.5kg重 の力で押すことで、 おもりを持ち上げていられることになります。 ここに出てきた「距離×力」を「力のモーメント」と呼びます。 一般に、こういった「距離×何か」のような量を「モーメント」と言います。 <曲げモーメント> さて、ここまでで、「曲げモーメント」を説明する準備ができました。 「曲げモーメント」とは、物を曲げようとする力のモーメントのことです。 一端を完全に固定した棒のもう一方の端を 棒が曲がるように上から力 P で押してやると、 押した点から棒の長手方向に距離 x の位置での曲げモーメント M は、 M = xP となります。 様々な計算で、曲げモーメントを使う時のポイントは、 モーメントのつりあいの式を立てることです。 力のモーメントがつりあっていないことは、物体が回転していることになるので、 回転していない条件として、モーメントのつりあいの式が成り立つのです。 <曲げ剛性> では、中立軸からの距離 y における曲げ応力 σ のモーメントを その断面で足し上げた量: ∫σy dA と断面が受ける曲げモーメント M のつりあいの式を立てます。 (ただし、積分範囲は断面積A。以下、断らない限り同様。) これは、 M = ∫σy dA となるので、曲げ応力の式 σ = Ey/r を代入して、 M = (E/r) ∫y^2 dA となります。ここで、 I = ∫y^2 dA と置くと、 M = EI/r と書けます。 従って、Mが一定とすると、EIが大きければ、曲率 1/r は小さくなります。 つまり、EI は曲げ難さを表す量になり、「曲げ剛性」と呼ばれます。 <断面二次モーメント> さて、I = ∫y^2 dA と唐突に置いてしまいましたが、 この I が「断面二次モーメント」です。 「距離×何か」をモーメントと言いましたが、 一般に「距離^n × 何か」を「n次モーメント」と呼びます。 つまり、「距離×何か」は 1次モーメント、 「距離^2 × 何か」は 2次モーメントです。 上記 I の場合は、「距離^2 × 断面の微小面積 dA」 になっていますので、断面二次モーメントというわけです。 積分記号がなんだか重々しいですが、単にたくさん足し上げているだけです。 断面二次モーメントが便利なのは、 材質によらず、断面の形状と寸法が分かれば、簡単に計算できてしまうことです。 これで、今回の目標である 「曲げモーメント」、「断面二次モーメント」、「曲げ剛性」 についてご紹介致しました。 次回は、「たわみ曲線の基本式」辺りをご紹介致します。 -- 高野智暢