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2011.06.10
D-0040. 空間コヒーレンスとコントラスト — TT
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 空間コヒーレンスとコントラスト 発行:エスオーエル株式会社 https://www.sol-j.co.jp/ 連載「知って得する干渉計測定技術!」 2011年6月10日号 VOL.040 平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。 干渉計による精密測定やアプリケーション開発情報などをテーマに、 無料にてメールマガジンを配信いたしております。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 平面度測定機 FlatMaster では、 干渉縞のコントラストを調整するために、空間コヒーレンスを変化させます。 コントラストとは、最も明るい部分と最も暗い部分の明るさの差のことです。 コヒーレンスとは、干渉のしやすさのことです。 干渉しやすいと、干渉縞が鮮明になりますので、 一見、コントラストの変化 = 空間コヒーレンスの変化 という関係は、 無条件で受け入れられるトートロジーのように思えます。 しかし、「光源の大きさを変えることで、空間コヒーレンスを変化させています。」 という事実を初めて聞いて、すぐに コントラストの変化 = 光源の大きさの変化 = 空間コヒーレンスの変化 という図式が納得できる人は少ないのではないでしょうか。 さらに、コヒーレンスは σ = (照明系のNA) / (対物レンズのNA) というσ値で表されるということを聞くと、コントラストとコヒーレンスの関係に 自信をもって「当たり前だ」と答えられなくなるかもしれません。 ただ、σ値の定義を見て直感的に「光源の大きさは、コヒーレンスに関係する。」 と、関連性に気が付く人はいるかもしれません。 さて、前置きが長くなりましたが、 今回は、光源の大きさがコントラストに影響することをみてみます。 コントラストを考えるからには、定量的に定義します。 明るさの最大値を I(max)、最小値を I(min) として、コントラスト C を C = [ I(max) - I(min) ] / [ I(max) + I(min) ] で定義します。 I(min) = 0 のとき、C=1でコントラストが最大になることが分かります。 そして、コントラストが下がっていくと、C<1 となり、C=0 が最小です。 干渉で困ったら、ヤングの干渉実験に立ち返って考えるのが分かりやすいので、 次のような状況を考えます。 波長λの点光源を2つ思い浮かべます。それぞれの位置を a,b とします。 a,b から離れた平面上に2つのピンホール p,q を開けます。 ピンホールの開いた平面の後ろにスクリーンを置きます。 点光源 b を消して、点光源 a のみでピンホール p,q を照らすと、 スクリーン上には干渉縞 f1 が映ります。 逆に、点光源 a を消して、点光源 b のみでピンホール p,q を照らすと、 スクリーン上には干渉縞 f2 が映ります。 干渉縞 f1 と f2 は、同じピッチになります。これを s とします。 しかし、f1 と f2 は、横に距離 d だけ、ずれています。d を計算すると、 d = s [ (ap - aq) - (bp - bq) ] / λ となります。 ただし、ap, aq, bp, bq はそれぞれ 2点間の距離の意味で使っています。 ここで、点光源 a と b で同時にピンホール p,q を照らすことを考えます。 2つの点光源は、全く独立したものですから、光の位相は全くランダムに変化します。 つまり、a と b の光は干渉しません。干渉しないということは、 単純に f1 と f2 の干渉縞を重ねた f1 + f2 がスクリーンに映る縞模様となります。 f1 と f2 の I(min) を 0 としたときに、 もし、f1 と f2 のパターンがぴったり重なったとすると、 f1 + f2 の I(min) は 0 のままです。 しかし先程説明したとおり、f1 と f2 のパターンは d だけずれています。 つまり、お互いの I(min)=0 の箇所に少し明るい部分が重なり、 f1 + f2 の I(min) は 0 ではなくなります。 従って、f1 と f2 のコントラストは、どちらも C=1 ですが、 点光源が2つあることで、干渉縞 f1 + f2 のコントラストは、C<1 に下がってしまいます。 光源が大きさをもつときは、点光源がたくさん集まったものとみなすことができます。 すると、それぞれ異なった d の干渉縞が互いに埋め合い、 コントラストを下げることが想像できます。 光源を大きくすれば、点光源が増え、さらに干渉縞を埋め合うことで、 コントラストがどんどん下がっていくことが分かります。 このようにして、コントラストの変化 = 光源の大きさの変化 を理解することができます。 -- 高野智暢