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2011.08.10

D-0043. ねじの締め付け力 — TT

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ねじの締め付け力

発行:エスオーエル株式会社
https://www.sol-j.co.jp/

連載「知って得する干渉計測定技術!」
2011年8月10日号 VOL.043

平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。
干渉計による精密測定やアプリケーション開発情報などをテーマに、
無料にてメールマガジンを配信いたしております。

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私たちの身の回りにありふれた機械要素に「ねじ」があります。

測定機を扱っている我々もねじに触れる機会はたくさんあります。
測定対象としてねじを扱うこともたまにありますが、
測定機に使われているねじを締めたり緩めたりすることが非常に多いです。

世の中には、ねじの緩みが人命に関わるようなものもありますが、
我々の測定機の場合、ねじの緩みで工場のラインを止めてしまう可能性があります。
そのため、ねじについてよく学び、経験を積むことが求められます。

ねじの締め方を見れば、その人の経験が分かるとも言われていますが、
ねじの締結ひとつをとっても専門書が1冊書けてしまう程、奥が深いものです。


今回は、ねじの締め付けについて、基礎的な計算をしてみます。

まずは、「ねじ」が「くさび」に見えるようになる必要があります。
どういうことかと言うと、角度θの直角三角形を考えます。これが「くさび」です。
これを直径 d の円筒に巻き付けます。すると「ねじ」の出来上がりです。
実は、ねじを締め付けることは、くさびを打ち込んでいるのと同じ原理なのです。

では、なぜねじは締め付けることにより、緩まなくなるのでしょうか。
これは、ねじの締め付けによって僅かにねじが伸び、縮もうとする力が発生し、
摩擦力が働くからです。


ここまでイメージできたら、状況を整理します。

ねじを1回転させた時に進む距離(リードと言います。)を L とします。
直径 d の円筒に巻き付いたくさびを考えると、これは、
底辺 πd で、高さ L の直角三角形となり、角度θとの関係は、
  L = πd tanθ
です。

この直角三角形の斜辺に転がらない(四角い箱みたいな)ものを乗せましょう。
ねじを締め付ける力 F は、この箱をくさびの底辺に対して水平に押す力です。

次にねじの軸方向にかかる力を W とします。
箱が斜辺を押している状況なので、斜辺に垂直な方向に押す力 R は、
  R = W cosθ
と書けます。ついでに W を斜辺の水平方向の力 S にも分解しておくと、
  S = W sinθ
です。

力 F も斜辺の垂直方向の力 N と 水平方向の力 T に分解しておきますと
  N = F sinθ,
  T = F cosθ
です。

斜辺の摩擦係数をμとすると、摩擦力 f は、
  f = μ( R + N )
と書けます。

斜辺に水平な力の釣り合いを考えると、
  T = f + S
です。

計算すると、

  T = μ( R + N ) + S = μ( W cosθ + F sinθ ) + W sinθ = F cosθ

なので、両辺を cosθで割って、

  μW + μF tanθ + W tanθ = F

となり、FとWで括って、

  F (1 - μtanθ) = W (μ + tanθ)

となります。従って、

  F = W (μ + tanθ) / (1 - μtanθ)

を得ます。そして、最初の L = πd tanθ を使えば、

  F = W (μπd + L) / (πd - μL)

となり、ねじの締め付け力が計算できるようになりました。

ここまで、この公式を導けば、
ねじの締め付けに対するイメージが明確になってきます。
また、公式を使って具体的な計算をしてみると、
数値的な感覚も身に付いてきます。

たかが「ねじ」、されど「ねじ」です。

--
高野智暢

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