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2011.09.10
D-0045. 球面の結像公式 — TT
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 球面の結像公式 発行:エスオーエル株式会社 https://www.sol-j.co.jp/ 連載「知って得する干渉計測定技術!」 2011年9月10日号 VOL.045 平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。 干渉計による精密測定やアプリケーション開発情報などをテーマに、 無料にてメールマガジンを配信いたしております。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 測定技術、特に光を用いた非接触測定を多く扱っている我々にとって、 幾何光学は必須の基礎知識です。 幾何光学を使って計算、あるいは作図する目的は、 「物体と像の関係」を知ることに尽きます。 物体 -[光学系]→ 像 この関係を知ることは、原理的には難しくありません。 物体から出た光線を反射や屈折といった単純な規則に当てはめて、 像に至るまで追跡していく、光線追跡を実行すればよいのです。 しかし、この計算の実行は計算量が多く、半端なく厄介です。 そのため、コンピュータが大活躍します。 では、全てコンピュータに任せておけばよいかと問われると、答えはNOです。 コンピュータは単純計算が得意ですが、何をすべきかという目的意識、 或いは課題や問題解決に必要な発想は、人間しか持ち合わせていません。 幸い、コンピュータが無かった時代に幾何光学の計算手法はかなり発達しました。 膨大な計算をせずに如何に求める精度の答えを早く簡単に出すことができるか。 これらの計算手法や概念を知っていることは、重要な意味を持ちます。 その中でも、最初に知っておくべき公式が「球面の結像公式」です。 (本当の最初の最初は、入射角=反射角 と 屈折のスネルの法則ですが。) 公式を導出してみましょう。 直線上に 点O、点C、点V、点O’の4点を置いて下さい。 点Oは物体、点O’は像のある点とします。 点Cを中心に点Vを通る円を描きます。CVの距離を r とします。 この円を境に、点O側の屈折率を n、点O’側の屈折率をn’とします。 円上に 点P を置き、OP = p、 PO’= p’とします。 (点Oから点Pを通り、点O’に向かう光線を考えます。) さらに、OV = s、 VO’= s’とします。 また、それぞれの角度を ∠OPC = i、 ∠COP = u、 ∠CO’P = u’、 ∠PCO’=θ とし、三角形CPO’の∠P の外角を i’= θ + u’とします。 後は、図形の問題として補助線を引きながら頑張って解くか、 スマートに正弦定理を適用して解くと、 (sin i ) / (s - r ) = (sinθ) / p, (sin i’)/ (r - s’) = (sinθ) / (-p) という式が得られます。 これにスネルの法則 n sin i = n’sin i’ を合わせて、 pn’(s’- r) = p’n(s - r) を得ます。 ここで、近軸光線 sin i ≒ i の近似を使います。 すると、p≒s、p’≒s’となるので、次の公式 n’/s’- n/s = (n’-n)/r を得ることができました。 この式は厳密には i→0 でしか成り立ちませんが、 25°位までなら 1%の誤差、50°位までなら10%の誤差で使えます。 光学系はレンズの集まりですから、この球面の結像公式があれば、 その公式を次々と適用していくことで、 最終的な像の位置を計算できるようになります。 レンズが多ければ、この計算も面倒ですが、 光線追跡の計算に比べるとはるかに楽です。 -- 高野智暢