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2012.07.10
D-0058. Uncertaintyの使い方 — TT
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ Uncertaintyの使い方 発行:エスオーエル株式会社 https://www.sol-j.co.jp/ 連載「知って得する干渉計測定技術!」 2012年7月10日号 VOL.058 平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。 干渉計による精密測定やアプリケーション開発情報などをテーマに、 無料にてメールマガジンを配信いたしております。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 測定機で管理の厳しい測定を行う場合、 Uncertainty(不確かさ)という指標を用いることがあります。 Uncertainty の考え方は、測定の本質に根ざしたものであり、 最初は難解でも、一旦理解してしまえば、理にかなった説得力のあるものです。 今回は、今月に入って立て続けにお問合せがあった Uncertainty について、 解説したいと思います。 Uncertainty の計算方法の解説は以前にもご紹介致しました。 さて、そのように計算した Uncertainty は、 どうやって使えばよいのでしょうか。 結論から申しますと、 例えば平面度の測定値が 321nm で、Uncertainty が 10nm だったとします。 そのとき、「321nm ± 10nm (信頼水準95%)」のように使います。 言葉で言い直すと、 「この物体の平面度が 311nm ~ 331nm の間にあることに対して 95%の自信が持てます」と言うことができます。 どうして、こんな面倒な言い方をするのでしょうか。 それには、1回測定して得た数値にどんな意味があるのかを深く考えてみる 必要があります。 今、真の値が分かっている物体があるとします。 「真の値」というものも実は厄介で、神のみぞ知る値というものが 「存在」するのかという哲学の存在論になってしまいます。 人間が行う測定では必ず誤差を伴うので、真の値など存在しない。 いや、理想的に真の値が存在すると考えた方が都合がよい。 いやいや、真の値というものが確かに存在して、でも得難いものだ。 などと議論が困窮してしまいます。 真の値について、実は人類は素晴らしい解決策を手にしています。 そのような研究を行っている機関が宣言する値を 「真の値」と呼ぼうではないか!というものです。 そのような研究の専門機関は、 アメリカではNIST、日本ではAIST、ドイツではPTBです。 これらの機関は、真の値を言い張って思考停止しているのではなく、 一般の人々が正しく使える真の値を提供する一方で、 真の値の意味を考え続けてくれています。 でも、その専門機関が今1回測定したものの真の値を教えてくれる わけではありません。 真の値が分かっている物体(例えば200nm)を繰り返し測定機で測ってみると、 確かにその測定機の精度は分かります。 平均値が 205nm で 5nm ずれていますね。 3σが2nmで分布に広がりがありますね。という具合です。 では、真の値が分かっていないものを今1回測って得た 321nm とはなに? 測定機の精度とどう関係があるの?となってしまいます。 そのようなわけで、Uncertainty というものを測定機ごとに計算し、 今1回その測定機で測った値に意味を持たせるようにするのです。 書いているうちに、今回書こうと思っていた信頼水準を説明する スペースがなくなってきてしまいました。 信頼水準95%では不満だ、あるいは過剰だ、と思われる方のために、 信頼水準の計算方法(解説はまたの機会に...)だけお伝えします。 エクセルで「 =2*(NORMSDIST(2)-NORMSDIST(0)) 」を計算してみて 下さい。0.9545 (=95.45%) となるはずです。 これが、先程から信頼水準95%と言っているものの出所です。 kという変数を用意しておいて、 エクセルで「 =2*(NORMSDIST(k)-NORMSDIST(0)) 」を計算すれば、 kの値に応じた信頼水準が得られます。 信頼水準95%ですと言われた Uncertainty を 2 で割り、kを掛けると、 そのkに応じた Uncertainty が得られます。 信頼水準95%の Uncertainty が 10nm のとき、 信頼水準99%の Uncertainty は 12.9nm になります。 (10nmを2で割って、k=2.58を掛けました。kの値はエクセルで探します。) もう少し追記すると、k=2で信頼水準95%と言っているのは、余裕があります。 k=2 では本当のところ、95.45% だからです。 少しでもプラスマイナスの値を小さくしたいときは、k=1.96 であれば、 信頼水準95.00% なので、±10nm と言っていたところを ±9.8nm と言えます。 -- 高野智暢