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2016.10.12
D-0117. Zernike多項式とRMS — TT
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ Zernike多項式とRMS 発行:エスオーエル株式会社 https://www.sol-j.co.jp/ 連載「知って得する干渉計測定技術!」 2016年10月12日号 VOL.117 平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。 干渉計による精密測定やアプリケーション開発情報などをテーマに、 無料にてメールマガジンを配信いたしております。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 今回のお話は、Zernike多項式の第4項目について、 RMSを計算してみようというものです。 通常、ある形状をZernike多項式に分解したときには、 そのZernike係数が重要なのであって、 項のRMSを計算する必要はありません。 しかし、何らかの特別な目的があるときには、 RMSを計算することに意味がある場合があります。 RMSとは、二乗平均平方根 のことです。 RMS は、各点(x,y) における高さ f(x,y) の二乗平均の平方根を取る計算になります。 具体的には、領域Aに対して、 RMS = √( (1/S)∫f^2(x,y) dxdy ) です。(ただし、積分領域は A とします。)そして、S は領域A の面積で、 S =∫dxdy です。(ここでも、積分領域は A とします。) さて、形状 F(x,y) をZernike多項式展開すると、 F(x,y) = Σ(αn Zn) = α1 Z1 + α2 Z2 + α3 Z3 + α4 Z4 + ... と書けます。このとき、Zn は Zernike多項式で、低次の項から Z1 = 1 Z2 = R cosθ Z3 = R sinθ Z4 = 2R^2 - 1 Z5 = R^2 cos(2θ) Z6 = R^2 sin(2θ) のように続いていきます。 αn は、各項の重み係数(Zernike係数)です。 では、Z4 = 2R^2 - 1 の項に対して、RMSを計算してみます。 Zernike多項式は、円上で積分したいので、dxdy のような直交座標系で考えると 都合がよくありません。そこで、r と θ 使った 2次元の極座標に変換します。 座標変換するときは、ヤコビアンを計算せねばなりません。 2次元極座標のヤコビアンは、 |∂(x,y)/∂(r,θ)| = r(cos^2 θ + sin^2 θ) = r ですから、 dxdy = r drdθ になります。 RMS の f には、f(r) = α4 Z4 = α4 (2r^2 - 1) を代入します。 すると、 RMS = √( (1/S)∬f^2(r) r drdθ) を計算すればよいことが分かります。 二重積分になっていますが、領域 A は 半径1の円で考えており、 変数θは 0~2π で積分し、変数 r は 0~1 で積分します。 θについての積分は先に実行できて、 RMS = √( (2π/S)∫f^2(r) r dr) となります。また、Sも計算できて、 S = ∬ r drdθ = 2π∫ r dr = 2π[(1/2) r^2] (0~1の範囲) = 2π( 1/2 - 0 ) = π です。従って、 RMS = √( (2π/π)∫(α4 (2r^2 - 1))^2 r dr ) = α4 √( 2∫(4r^4 - 4r^2 + 1) r dr ) = α4 √( 2∫(4r^5 - 4r^3 + r) dr ) = α4 √( 2×[ (4/6)r^6 - (4/4)r^4 + (1/2)r^2 ] ) (0~1の範囲) = α4 √( 2×( (2/3) - 1 + (1/2) - 0 )) = α4 √(1/3) つまり、Zernike多項式の第4項目のRMSは、 その Zernike係数 α4 を √3 で割った数値になるということです。 同様に、Zernike多項式の全ての項について、RMSを計算することができます。 でも、毎回計算するのは、面倒ですね。 一回計算して、公式を作っておくと便利ですが、 それでも毎回測定値を変換するのは面倒です。 トロペル社のソフトウェア TMS では、 Zernike 各項の RMS を直接出力する機能があるので便利です。 さて、Zernike多項式のRMSには、どんな使い道があるのでしょうか。 実は、ストレール比(Strehl definition)を計算するのに便利です。 Zernike多項式には直交性があるため、それぞれのRMSが分かれば、 各項の回折限界の影響を引き算で計算することができるようになります。 -- 高野智暢