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2019.04.24
D-0149. キャリブレーションの頻度 — Y.O
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ キャリブレーションの頻度 発行:エスオーエル株式会社 https://www.sol-j.co.jp/ 連載「知って得する干渉計測定技術!」 2019年04月24日号 VOL.149 平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。 干渉計による精密測定やアプリケーション例などをテーマに、 無料にてメールマガジンとして配信いたします。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ こんにちは。営業技術グループの落合です。 今回は、 Tropel社製平面度測定機(レーザー干渉計)の キャリブレーションの頻度 についてお話ししたいと思います。 FlatMasterシリーズ(半導体ウエハ、機械部品他向け 手動機)や UltraSort(半導体ウエハ向け 自動機) では、 1日1回のキャリブレーション を推奨しています。 また、 測定感度を切り替えたらキャリブレーションしてください。 ともお伝えしています。(感度変更オプション付きの場合) そうしますと、 「キャリブレーション頻度を1日1回より減らしたらいけないの? なぜ1日1回なの?」(byユーザー皆様) 「1日に何度か測定感度を切り替えて使うんだけど、 結局キャリブレーションは1回でいいの?」(by感度変更オプション付きの ユーザー様) といったご質問を受けることになります。 最終的には、品質管理の観点から お客様ご自身の基準で頻度を決定いただければ問題ないのですが、 そうはいってもどうなの?となると思います。 今日はその疑問にお答えできる情報をお送りしたいと思います。 着目したいポイントは3つあります。 測定感度を変えるには、 レーザーの入射角を変動させています。 ■ポイント1 入射角度と測定感度の関係 どれくらいの角度変化で、 どれくらい測定感度が変わるのでしょうか? 測定感度<縞感度>の計算式 縞感度S=λ/2cosθ[μm/fr] (λ:レーザー波長635μm) 参照:D-0003. 縞感度の概要と式の導出 より、 例えば縞感度Sが S_Low =約1.5[μm/fr]から S_Med =約4.0[μm/fr]に 切り替わった時、 入射角θは θ_Low =77.78[deg]から θ_Med =85.45[deg]に と変わります。 では次に、θ_Low =77.78[deg]から、 仮に角度を0.1[deg]ずつ変えたとすると、 縞感度はどうなるか見ていきましょう。 θ_Low 77.78 77.88 77.98[deg] S _Low 1.500 1.512 1.524[μm/fr] 同様にMediumでみてみます。 θ_Med 85.45 85.55 85.65[deg] S _Med 4.002 4.092 4.186[μm/fr] Extendedでは、 θ_Ex 87.73 87.83 87.93[deg] S _Ex 8.015 8.385 8.790[μm/fr] 斜入射式のFlatMaster、UrtraSortでは、 角度が0.1[deg]ずつ変わった場合、上記の様に感度が変化していきます。 縞感度が/cosθで得られることからもわかるように、 同じ0.1[deg]変化でもθ=90に近づくにつれ、変動幅が大きくなり、 特にExtendedについては感度が動きやすい と言えます。 ■ポイント2 入射角を変える要因 その1 さらに、入射角を変える要因には何があるでしょうか? 着目するのは、 装置内ではどのように入射角を切り替えているか? です。 この答えは、 イメージされやすいかもしれません。 ミラーによる光の反射 平行平面ガラスによる光の屈折 を利用して、 プリズム上の参照平面に レーザー光線が入射する角度を変えています。 普段お使いのユーザー様が、 測定開始ボタンをポチっと押した時にも、 (レシピをLow/Med/Extendedと切り替え、感度を変えた場合、) 装置内で、ミラーと平行平面ガラスが粛々(しゅくしゅく)と動いています。 実のところ、 平行平面ガラスの位置(角度)を変えるモーターの精度は約×10^(-4)[deg]オーダー です。 仮に時間を空けずに感度を切り替えて キャリブレーションを繰り返していただければわかりますが、 短時間の感度切り替えだけで、「■ポイント1」のような 0.1[deg]に相当するほどの縞感度の変動は起こりません。 …では、縞感度の変動は、 上記で示した数字より小さく収まると思ってよいか? というとそうもいきません。 ■ポイント3 その他の影響 お客様先によって環境条件は全く異なり、 この後お話しするように複数の要因が関わるため、 影響は一概に数値化しては言えません。 しかしながら、実績値として縞感度は 1.50、1.51、1.52 …[μm/fr] 4.0、 4.1、 4.2 …[μm/fr] 8.0、 8.4、 8.8 …[μm/fr] 程度、変動します。 (あくまで一例です) 実際に縞感度への影響が大きい一因となるのは、温度変化です。 低熱膨張ガラスとはいえ、装置内の光学レンズやミラーは熱膨張で大きさが変化し、 結果としてプリズムにレーザー光線が入射する角度に影響します。 そのため、 特に、温度が1時間に1℃以上変化した場合には キャリブレーションの実施をお願いしています。 そして、定温のクリーンルーム等であっても、 一次的な温度変化、周辺機器による振動等の影響から、 長期間使用すれば縞感度が変動する要因は増えます。 以上、ポイント1から3を踏まえて、 まとめますと… 一つ、純粋に測定精度を最も上げるためには、 測定感度を切り替えたら都度キャリブレーションを実施いただくこと ががおすすめです。 一つ、環境および時間変化による感度変化のため、 定期的なキャリブレーション がおすすめです。 また、品質管理の観点からも、定期的なキャリブレーションは重要です。 (例えば、もしも出荷品の測定結果になにか問題が見られた時、 いつの時点からの出荷品を対象とするか、 そのキャリブレーション実施時点まで、さかのぼれます。 測定結果が、装置によるものか、測定物によるものか の切り分けを助けま す。) その実施頻度の目安として、 1日1回 は妥当ではないでしょうか。 そのため、私たちは、 一日一回のキャリブレーション 測定感度を切り替えたら都度キャリブレーション + 温度が1時間に1℃以上変化したら、キャリブレーション をお伝えしています。 参考になりましたら幸いです。 ※Tropel社製平面度測定機(レーザー干渉計)では、 お客様ご自身でキャリブレーションを実施できる校正原器が付属しています。 キャリブレーション実施にかかる時間は、数分です。 -- Y.O