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2022.04.20
D-0181. FlatMasterのレーザーの偏光について — T.S
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ FlatMasterのレーザーの偏光について 発行:エスオーエル株式会社 https://www.sol-j.co.jp/ 連載「知って得する干渉計測定技術!」 2022年4月20日号 VOL.181 平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。 干渉計による精密測定やアプリケーション開発情報などをテーマに、 無料にてメールマガジンを配信いたしております。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 初めまして。営業技術グループの清水です。 今月より「知って得する干渉計測定技術!」を定期的に担当致します。 今回は初回ですのでまずは簡単に自己紹介を致します。 出身は地元埼玉で、大学時代は物性物理学を専攻していました。 卒業後約10年間、半導体製造装置の機械電気の設計開発業務を行っており、 この度縁あってエスオーエルに入社致しました。 機械電気設計者から光学技術者への転身ということもあり、 毎日が学びの連続です。 そんな私が日々疑問に思ったことや学んだことを この場をお借りしてoutputしていきたいと思います。 さて、それでは本題に入ります。 今回のお題は「FlatMasterのレーザーの偏光について」です。 先日先輩から、「FlatMasterでは組み立て時に偏光方向を調整します」 という説明を受けました。 この情報だけ聞くと、 1.どの偏光を使用するのだろう??(P偏光? S偏光?) 2.なぜ偏光を調整する必要があるのだろう?? という疑問が当然浮かぶと思います。 この疑問について、 振幅反射率、透過率と干渉縞のコントラストという観点から アプローチして自分なりに結論を出してみましたので その結果を記載致します。 どうかお付き合いください。 それでは始めていきましょう(=゜ω゜)ノ まず初めに、P偏光とS偏光の反射率、透過率について 考えていきましょう。 と、その前に、言葉の定義の再確認をしていきます。 P偏光とは、電場の振幅方向が入射面に水平な偏光成分 S偏光とは、電場の振幅方向が入射面に垂直な偏光成分 入射面というのは、入射光、反射光、屈折光を含む平面 さて、それでは反射率と透過率について、 P偏光の反射率を Rp、透過率を Tp、 S偏光の反射率を Rs、透過率を Ts とするとそれぞれ次式で表されます。 (この式の導入についてはいずれ私が担当するメールマガジンで ご説明できればと思います。) Rp = {tan(θ1-θ2)}/{tan(θ1+θ2)} Tp = {2sin(θ2)cos(θ1)}/{sin(θ1+θ2)cos(θ1-θ2)} Rs = {-sin(θ1-θ2)}/{sin(θ1+θ2)} Ts = {2sin(θ2)cos(θ1)}/{sin(θ1+θ2)} ここで、 θ1は境界面への入射角 θ2は境界面での屈折角 です。 次に干渉縞のコントラストについて考えます。 干渉縞のコントラストの大きさは次式で表されます C = (Imax-Imin)/(Imax+Imin) Imax とは、干渉のもっとも強め合った部分の明るさ(強度) Imin とは、干渉のもっとも弱めあった部分の明るさ(強度)です。 理想的には Imin=0 となった時に 最もはっきりとしたコントラストになります。 つまり干渉光の弱め合った部分の明るさが 0 になることが 理想的でありです。 光の強度は振幅の二乗に比例します。 そのため、この条件は干渉する2つの光線の振幅が等しいこと だということは容易に想像ができると思います。 さて、それでは P偏光とS偏光の干渉のコントラストについて、 それぞれ考えてみましょう FlatMasterでは干渉する2つの光線(参照光とテスト光)の 経路は以下のようになっています。 参照光:プリズム表面で1回反射した光 テスト光:プリズム表面を1回透過して、 wafer面で反射後再度プリズム面を透過した光 実際には参照光とテスト光が分岐する前後でも 透過、反射が発生しますが、今回はテスト光と参照光の 差分のみを考えるため省いています。 また、FlatMaster は、部分コヒーレント光を使っていますが、 簡単のためコヒーレント光で考えます。 上記より、 元の光線の振幅 1 とすると以下の式で表せます。 P偏光の参照光とテスト光の振幅(Ap,Bpとする)は、 Ap = Rp Bp = Tp×Rw×Tp’ (ただし、Tp’は空気中からプリズムに侵入するときの透過率) S偏光の参照光とテスト光の振幅(As,Bsとする)は、 As = Rs Bs = Ts×Rw×Ts’ (Ts’は空気中からプリズムに侵入するときの透過率) 注)Rw は wafer での反射率です。 今回は簡単のため鏡面 wafer とし Rw=1 で計算します。 また、 Imax = (A+B)^2 (最も強めあう点の強度なので、強め合う点の振幅の二乗) Imin = (A-B)^2 (最も弱め合う点の強度なので、弱め合う点の振幅の二乗) (本来は振幅の「二乗に比例」なので比例定数が付きますが、 今回は分子分母で消えるので省略) さて、これで必要な式はすべてそろいました。 あとは各センシティビティに対応した角度(サンプル面への入射角が約79°~88°) でのコントラストの値を計算するだけです。 結果は添付の図のようになりました。 グラフから分かるように、 縞感度が高い(1.8um程度)の時では、P偏光もS偏光も差がないのですが、 縞感度を下げていくとP偏光の方がコントラスト的に有利だということが分かります。 そのため、今回計算したような条件では レーザーの偏光方向をP偏光に調整するようにしています。 -- T.S