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2024.04.24
D-0209.ウェーハ搬送時における吸着圧力について— H.S
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ ウェーハ搬送時における吸着圧力について 発行:エスオーエル株式会社 https://www.sol-j.co.jp 連載「知って得する干渉計測定技術!」 2024年4月24日号 VOL.D-209 平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。 干渉計による精密測定やアプリケーション開発情報などをテーマに、 無料にてメールマガジンを配信いたしております。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ こんにちは、技術グループの佐々木です。 今回は、弊社のウェーハ用平面度測定機(自動機)である、 UltraSort-II の搬送時におけるウェーハの吸着圧力に ついて話していこうと思います。 弊社HPにも記載がございますが、 UltraSort-II(以下、US2)はスループットが 非常に早く150枚/hourとなっております。 これはウェーハを吸着保持するアームが2つあることと、 ロボットの速度が速いため実現できています。 スループットからもわかる通り、 ロボットのスピードは見た目もかなり速く 始めて見た際は驚きました。 当然、搬送時には安全にウェーハを搬送する必要があるので、 しっかり吸着する必要があるのですが、 実際にはウェーハにどれくらいの力がかかっているか、 今回疑問に思ったので計算してみることにしました。 US2で使用している真空ポンプの真空圧は、 84.6kPa です。 このときの真空吸着力は、 84.6kPa = 0.86kgf/cm^2 となります。 そして、搬送用のアームについている 吸着溝の面積を確認すると、約 10.7cm^2 程度でした。 (吸着溝の形状はすこし複雑で大まかに 計算しましたが、意外と小さいなと感じました。) この条件でウェーハにかかる吸着力を計算すると ウェーハ1枚当たりに掛かる力は、 0.86 kgf/cm^2 × 10.7 cm^2 = 9.202 kgf 約 9kgf の力で吸着していることがわかりました。 搬送部分の吸着圧としてはどうなのでしょうか。 ロボットの搬送時の速度を確認すると、 1.016m/sec でした。 搬送時でウェーハに最も力がかかる瞬間として、 最大の速度から緊急停止した時を想定します。 ロボットが最大の速度の状態から急停止なので、 1.016m/sec から 0.05sec で急停止すると 仮定した場合 1.016m/sec / 0.05sec = 20.32m/sec^2 となり、ウェーハには 20.32m/sec^2 の加速度がかかります。 8”Siウェーハ 725μm 厚み の重さは約 0.05kg なので、 急停止によるウェーハにかかる前方向の慣性力は F = am で 20.32 × 0.05 = 1.016N 搬送時でウェーハに最も力がかかる瞬間は、 1.016 N = 0.103 kgf となりました。 それに対する力である静止摩擦力は F = μN で計算できます。 N(垂直抗力)はウェーハにかかる重量なので、 ウェーハ重量と先ほど算出した吸着力を合わせて、 9.252 kgf、 これをN(ニュートン)単位に直すと 90.67 N となります。 シリコンウェーハ裏面と搬送用アームの最大静止摩擦力から 静止摩擦係数μを計算したところ μ=0.16 となりました。 (計算内容は今回は省略いたします) これらを F=μN に代入すると F = 0.16 × 90.67 = 14.685N 静止摩擦力は 14.69 N ということがわかりました。 慣性力 1.016 N と比較しても大きいため、 搬送用アーム十分な吸着力があると言えます。 今回は以上となります。 自動機の需要が増えたからこそ、色々な方向性から 装置の仕様について理解を深めていきたいと思います。 最後までお付き合いいただきありがとうございました。 -- H.S