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2020.03.25
E-0090. 複合品の測定条件について — E.C
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 複合品の測定条件について 発行:エスオーエル株式会社 https://www.sol-j.co.jp/ 連載「測定の新常識!?SOLがお伝えするノウハウ!」 2020年3月25日号 VOL.090 平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。 X線CTスキャンによる精密測定やアプリケーション開発情報などをテーマに、 無料にてメールマガジンを配信いたしております。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 皆さん、こんにちは。 営業技術の張です。 今回は複合品の測定条件について話します。 X線CTでスキャンする原理は、ある強度のX線が物体を透過し、 透過後のX線強度をイメージセンサーで受け取って、 内部構造も含めた3次元形状をコンピュータ上で再構成しています。 式で表すと、 I = I0 exp(-μL) です。 空気の吸収係数がほぼ 0 の為、透過後のX線強度は I0 のままです。 単一材を透過する場合、この式に従い、透過後のX線強度が I になります。 イメージセンサーで I0 と それぞれの位置における I を受光すると、 サンプルの形状に対応した透過画像が撮れます。 樹脂と金属、或いは樹脂とゴムの場合など、 吸収係数が違う材質を照射するときには、 吸収係数が違うため、若干複雑になります。 例えば、金属と樹脂の複合品を透過する場合: 金属: I1 = I0 exp(-μ1 × L1) 樹脂: I2 = I1 exp(-μ2 × L2) = I0 exp(-μ1 × L1 - μ2 × L2) 従って、それぞれ透過後のX線の強さの差は、 I0 - I1 = I0(1-exp(-μ1 × L1)) [1] I0 - I2 = I0(1-exp(-μ1 × L1 - μ2 × L2)) [2] I1 - I2 = I1(1-exp(-μ2 × L2)) [3] になります。 この式より、測定条件の最適化を検討してみます。 測定においては、イメージセンサーで受光した I と I0 の差が大きくなれば、 鮮明な画像を得られます。 複合品の場合、差 (I0 - I1), (I0 - I2), (I1 - I2) の それぞれが大きくなったが良いです。 式 [1] と [2] の右辺を見ると、差を大きくするには、I0 が大きくなればよいです。 或いは、exp(-μ1 × L1) と exp(-μ2 × L2) を小さくするために、 (μ1 × L1) と (μ2 × L2) が大きくなればよいです。 これにより、照射線量 I0 を大きくすれば差が大きくなり、 より良い金属・樹脂データが撮れます。 但し、大き過ぎると、検出器が飽和し、正しく検出できなくなる為、注意が必要です。 I0 を大きくするには、電圧を上げ、電流を上げ、露光時間を上げる方法があります。 また、吸収係数 μ と透過距離 L の積を大きくする場合についても考えます。 管電圧を下げると、吸収係数が大きくなります。 実際のところ、X線は連続エネルギーである為、 吸収係数もエネルギーに応じて連続的に変化します。 ただ、ここでは原理を説明する為に、最大管電圧に対応する吸収係数で説明していきます。 透過距離はサンプルの厚みであり、位置調整により透過距離を大きくすることができます。 但し、吸収係数と透過距離の積が大きすぎると、透過が出来なくなります。 そのため、I1 と I2 は、一定以上の明るさが必要です。 つまり、コントラストを大きくする方法として、電圧下げ、透過距離を増やす方法があります。 しかし、電圧の調整について考えれば、I0 の調整とはトレードオフの関係になります。 以上は一般的に、単一素材をスキャンする場合に考えることです。 式 [3] から見ると、複合品のコントラストを大きくする方法は: まずは、I1 が大きれば良いです。 それには、金属部分の I0 を大きくする、または (μ1 × L1) を小さくするのが良いです。 金属の透過距離を薄くするのが一番効果的です。 次は、樹脂の吸収係数 μ2 と透過距離 L2 を増やすことを考えます。 樹脂は金属より吸収係数が小さい為、複合品の場合、 樹脂が透けて映らなくなってしまうことも多々あります。 複合品を実際にスキャンしてみると、 金属により生じたビームハードニングやメタルアーチファクトがあり、 それを低減する為に、MSP-CT というオプション機能もございます。 今回は、複合品の測定条件についてお話しました。 実際にスキャンする場合には、原理を考えながら条件を調整した方が、 より綺麗にデータを取得できるようになります。 それでは、今日はこの辺で。 最後までお付き合い頂き、有難う御座いました。 -- E.C