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2021.12.22

E-0116. 真空の排気式の導出 その2 — E.C

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真空の排気式の導出 その2
 
発行:エスオーエル株式会社
https://www.sol-j.co.jp/
 
連載「測定の新常識!?SOLがお伝えするノウハウ!」
2021年12月22日号 VOL.116

平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。
X線CTスキャンによる精密測定やアプリケーション開発情報などをテーマに、
無料にてメールマガジンを配信いたしております。
 
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
 
 
 
皆さん、こんにちは。
営業技術の張です。

前回は真空引きの理想式を導きました。
その式より、「理想的には」X線管の空気圧が大気圧から
高真空まで排気すると、約1.8秒がかかります。

でも、実際には大気圧 10^5 Pa から 10^-3 Pa(X線出す最低真空条件)までは
約1時間がかかり、10^-4 Pa までは約10時間がかかります。

その原因について少しお深く話します。

前回はポンプの排気過程としては、
まず粘性流領域、次に中間流領域、最後は分子流領域と
分けていることを説明しました。

粘性流領域は分子が満たされた状態であり、分子の平均移動距離が短く、
分子同士が頻繁に衝突し合っているから、水のように連続的な流体として扱えます。
その計算式は既に導きました。

分子流領域は空間分子密度が小さい状態であり、
気体分子同士はほとんどぶつからず、容器の端から端に達することになり、
流体としては扱えないです。

粘性流と分子流の間の条件での流れは中間流として定義されています。


今回は分子流領域の現象を説明し、排気式を導いてみます。

容器内の気体分子は、容器内壁に衝突すると、そこに付着し、
一定の滞在時間の後、再び飛び出します。

このとき、粘性流領域では気体分子が内壁にぶつかると、
先に吸着された他の分子もある為、滞在時間は非常に短いです。

一方、分子流領域では、排気によりクリーンな内壁表面が露出され、
気体分子が内壁にぶつかると、滞在時間がとても長くなります。

その為、高真空の場合、容器中で飛び回っている気体分子より、
容器表面に吸着している分子の方が遥かに多いのです。

真空排気が進んで、分子流領域になると、
この吸着されている気体分子がどんどん放出されます。

それ以外に内壁に吸蔵している気体、材料のガス化、
表面における化学反応等により生成されたガスなどの放出も同時に行われます。

放出した気体分子の成分は主に水蒸気と一酸化炭素が多いです。

高真空領域になると、排気式はこのガス放出も考えなければなりません。

容器内へのガス放出が Q であると仮定すると、
前回の排気式:

  V * dp/dt = -Sp

は、変更されて、

  V * dp/dt = -Sp + Q

となります。

この式を書き直すと、

  dp/dt = -(S/V) * p + Q/V

になります。
更に式を変更すると、

  ( V / (Q - Sp) ) dp = dt

です。

この式を解くために、別のパラメータ:

  x = Q-Sp

を導入します。
この場合、

  p = Q/S - x/S

になります。
両側同時に微分すると、

  dp = (-1/S) dx

です。
この結果を使って、元の式を変形します。

  (-V/S)(1/x)dx = dt

両側同時に積分すると、

  ln(x) = -(S/V)t + 定数C

になります。その結果、

  x = exp((-St/V)+C)

になります。
ここで、x = Q-Sp を上記式に代入すると、

  p = (-1/S) exp((-St/V)+C) + Q/S

になります。

tは0の時、p = p0 の解を入れると、

  (-1/S) exp(C) = p0 - Q/S

になり、次の式を得られます:

  p1 = (p0 - Q/S) exp(-St/V) + Q/S

これはガス放出を考慮した場合の排気式です。

この式から見ると、p0 >> Q/S のうちは、
排気の最初頃の圧力が指数的に減少します。

排気時間が十分に長くなり、(p0 - Q/S) exp(-St/V) が 0 に近づくと、
圧力 p1 は Q/S に近似できるようになります。

つまり、高真空の場合、真空圧はガス放出量 Q が支配的な存在です。

ガス放出 Q は真空圧や容器の材質により決まっています。
一般的に金属やガラスのガス放出量は少なく、樹脂やゴムでは多くなります。

TomoScope では、放出量が低いステンレス鋼を採用していますが、
水蒸気と一酸化炭素の平均滞在時間がとても長いため、
高真空 10^-4 Pa まで約10時間かかってしまいます。

真空の排気は、ガス放出以外に、配管コンダクタンス、実行排気速度など
も考慮する必要がありますが、
ここでは排気時間に影響する主な原因のみを説明する為、
他の項目には触れませんでした。

それでは、今日はこの辺で。
最後までお付き合い頂き、有難う御座いました。


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E.C

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