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2022.02.23
E-0119. X線CT装置に供給するエアー圧力の話 — E.C
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ X線CT装置に供給するエアー圧力の話 発行:エスオーエル株式会社 https://www.sol-j.co.jp/ 連載「測定の新常識!?SOLがお伝えするノウハウ!」 2022年2月23日号 VOL.119 平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。 X線CTスキャンによる精密測定やアプリケーション開発情報などをテーマに、 無料にてメールマガジンを配信いたしております。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 皆さん、こんにちは。 エスオーエル営業技術の張です。 X線CT装置 TomoScope は安定な測定精度を出す為に、 回転軸にエアーベアリングを採用しています。 エアーベアリングの動作を支える為に、最低限のエアー圧力が必要です。 Werth社製 TomoScope の場合、エアー圧力は 5.5 ~ 10 bar が必要です。 今回はエアーの圧力について少しお話します。 エアーの流れは、コンプレッサーからパイプやチューブを経由し、 装置に送られます。 この流れは、真空の排気過程と全く逆で、 気体を圧縮して、圧力を高めています。 圧縮した気体を装置に送り込んでいます。 圧縮した気体は流体として扱えるため、 理論上はエネルギー保存法則によりベルヌーイの定理が適用できます。 ベルヌーイの定理: (ρ/2)(v1)^2 + ρg(z1) + (p1) = (ρ/2)(v2)^2 + ρg(z2) + (p2) この式の意味は、 流体は1の位置(コンプレッサー)から2の位置(装置)まで流れる場合、 運動エネルギーと位置エネルギーと圧力のエネルギー の総和が保存することです。 ベルヌーイの定理を使う前に、一度この式を導いてみます。 まずは第一項の運動エネルギーです。 運動エネルギーは W = m(v^2)/2 です。 質量 m は固体の場合、密度ρと体積 V の積になりますが、 流体の場合、流体密度ρ、体積流量 Q と流れる時間 dt の積になります。 m = ρQ dt 体積流量 Q はチューブの断面積 S と流速 v の積になります。 Q = Sv つまり運動エネルギは、 m(v^2)/2 = ρSv dt (v^2)/2 と書き直すことができます。 次に第二項の位置エネルギーです。 位置エネルギーは W = mgh で、流体に直すと mgh = ρSv dt g z になります。 最後、第三項の圧力エネルギーです。 圧力のエネルギーは W = Fx です。 流体の場合、作用力 F は圧力 p とチューブ断面積 S の積になり、 移動距離 x は流速 v と流れる時間 dt の積になります。つまり、 Fx = pSv dt 理想的に、位置1と位置2のエネルギーが等しいため、 下記式が得られます: (ρ/2)(S1)(v1)dt(v1)^2 + ρ(S1)(v1)dt g(z1) + (p1)(S1)(v1)dt = (ρ/2)(S2)(v2)dt(v2)^2 + ρ(S2)(v2)dt g(z2) + (p2)(S2)(v2)dt 流体は連続的に流れている為、流量 Q が一定です。 Q = Q1 = Q2 = (S1)(v1) = (S2)(v2) そこで、流量 Q と時間を消すと、 最初の式(ベルヌーイの定理)が得られます。 更に次のように式を変更します: ρ{ (v2)^2 - (v1)^2 }/2 + ρg{ (z2) - (z1) } + { (p2) - (p1) } = 0 この式を見ると、第一項の運動エネルギは、流速で決まります。 コンプレッサーから装置までのチューブ径が一定であれば、流速が一定の為、 運動エネルギーは変化しないです。つまり、第一項は 0 です。 第二項の位置エネルギーと第三項の圧力エネルギーを見ると、 仮に数メートルの位置段差が存在しても、 位置エネルギーは圧力エネルギーよりとても小さい為、無視できます。 第二項も 0 と近似できます。 高圧気体の場合、殆ど第三項で決まります。 つまり、理想上 p1 = p2 になります。 但し、空気がパイプを通って流れる場合は、 電流を導線に流す状況と同じように、内部抵抗により、 空気の損失が発生します。 更にコネクタやケーブルの変形などが存在すると、更に損失が多くなります。 この損失を pl と書くと、 上記の式は (p1) = (p2) + (pl) と書くことができます。 この圧力損失は、ファニングの式: (pl) = 2fρ(v^2)(L/D) で試算することができます。 装置は安定動作する為に最低 5barが必要です。 しかし、圧力損失や変動があるため、 余裕のある出力能力を持つコンプレッサーの設置が必要です。 装置入力直前の圧力は、5.5bar 以上必要です。 また、配管は内径を大きく、長さを短くし、 エアー消費量の多い別の装置とコンプレッサーを共有しない などの配慮をすると良いです。 脈流を抑えるためのタンク設置や コンプレッサーの振動が測定機に影響しないような配慮も大切です。 それでは、今日はこの辺で。 最後までお付き合い頂き、有難う御座いました。 -- E.C