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2024.10.23
E-0166.Abbeの原理について— E.C
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ Abbeの原理について 発行:エスオーエル株式会社 https://www.sol-j.co.jp 連載「測定の新常識!?SOLがお伝えするノウハウ!」 2024年10月23日号 VOL.E-0166 平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。 X線CTによる精密測定やアプリケーション開発情報などをテーマに、 無料にてメールマガジンを配信いたしております。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 皆さん、こんにちは。 今回は「Abbeの原理」について書きます。 測定器を扱う方にとって、Abbeの原理は一度は耳にする重要な概念です。 この原理は、測定器の精度を高めるために不可欠なものです。 ここで改めて、Abbeの原理についておさらいしてみます。 Abbeの原理は、ドイツの物理学者エルンスト・アッベによって提唱されたもので、 寸法を測定する際の精度に関する重要な原理です。 この原理は、測定精度を高めるためには、 「測定対象物と測定器具の目盛を測定方向の同一直線上に配置する必要がある」 というものです。 小さな測定ツールから大型の加工・測定機器に至るまで、 高い精度を求める場合、この原理に従うのが最善です。 では、なぜAbbeの原理に従うことが重要なのかを説明します。 【マイクロメータ】 まず、アッベの原理に基づいて設計されているマイクロメータについて説明します。 マイクロメータは、測定対象物と目盛が同一軸線上に配置されています。 そのため、被測定物(長さL)が軸線に対してわずかにθだけ傾いた場合、 測長誤差 ΔL は、 ΔL = L - L cosθ となります。(同一軸線上になければ、この式にはなりません。) ここで、cosθをテーラー展開すると、 cosθ = 1 - θ^2/2! + θ^4/4! -... ですから、上記式に代入すると、 ΔL ≒ (Lθ^2)/2 になります。 わずかな量 θ の2乗である θ^2 は、非常に小さな値となるため、 測長誤差ΔLも実質的には無視できるほど小さな値になります。 【ノギス】 次に、Abbeの原理に従っていないノギスの例を説明します。 ノギスは、測定対象物と目盛が同一軸線上に配置されていないため、 高い精度が要求される場合には誤差が生じやすくなります。 そのため、ノギスでは特に注意が必要です。 被測定物の中心から目盛の軸線までの距離を h とした場合、 ノギスの先端クランプ部(ジョウ)が僅かにθだけ傾いた時、 測長誤差 ΔL は、 ΔL = -h sinθ となります。 sinθをテーラー展開すると、 sinθ = θ - θ^3/3! + θ^5/5! +... になり、上記式に代入すると、 ΔL ≒ -hθ になります。このような状況では、 測定誤差が無視できないレベルになる可能性があります。 例えば、 被測定物とジョウが両方とも30mmであり、傾き角度θが0.1度の場合、 マイクロメータの誤差は 0.046μm になります。 一方、ノギスの誤差は 0.052mm となり、 その誤差は、約1000倍の違いになります。 ただし、ノギスであっても、ジョウの傾きが無く、 被測定物だけが傾いた場合、マイクロメータと同じ測定誤差になります。 この測定誤差を低減するには、以下の2つ方法が考えられます。 1. 距離hを小さくする: Abbeの原理に従い、できるだけ同じ軸線上で測定を行います。 2. 傾き角度θを小さくする: ジョウのピッチングとヨーイング誤差を減らさなければなりません。 これを実現するには、非常に高い精度を持つガイドが必要です。 また、単軸のガイドではなく、2本の平行なガイドを使用すれば、 この測定誤差を低減することができます。 【三次元測定機】 一般的に三次元測定機では、Abbeの原理に従うことが難しいです。 駆動部、リニアスケール、測定部などの設計により、 被測定物と同じ軸線上に配置することが難しいです。 Werth社の三次元測定機やX線CT装置も例外ではありません。 しかし、Abbeの誤差を低減する為に、多くの技術が詰め込まれています。 まず、剛性が高い構造を持ち、非常に高精度なガイドが取り付けられています。 さらに、ソフトウェアによって補正を行い、高い精度を保証しています。 また、一部の上位機種では、Z軸方向のみAbbeの原理に従って設計されています。 これにより、装置の測定誤差を最小限に抑えることができます。 以上、Abbeの原理についてお話ししました。 それでは、今日はこの辺で。 最後までお付き合い頂き、有難う御座いました。 -- 張